サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察10
鬱・少女編

2005年5月13日執筆:第一稿 5月14日改訂:第二稿

真鏡名ミナ
公式を見てない人用の簡易紹介
 琉球から来た妖滅師の少女。人が嫌い。彼女が村を空けた隙に村を滅ぼされる。幼い頃にゴーヤ畑で拾ったシーサーのチャンプルを唯一の友達として連れている。新キャラ。
オープニング
森の中
 森の中、画面が右へスクロールすると、弓を抱いたミナが立っている。
ミナ
「…………チャンプル?」
 顔だけで振り返る。画面左からチャンプルがフレームインし、ミナに駆け寄ってくる途中で転んでしまう。滑ってくるチャンプルをしゃがんで受け止めるミナ。
ミナ
「ごめんねチャンプル。急ぎすぎてたみたい……」
 
抱き上げて立ち上がる(ボイス「あたたかい……」)。
ミナ「もう、あなたとふたりだけね……。妖滅師の私がいない間に村を滅ぼしたあやかし……どうしても……許せない。あなたをまきこみたくはない。けれど、ひとりで戦えるほど、わたし、強くないから……。チャンプル、あなただけは守るから……一緒にきてね。ずっと一緒にいようね。……約束ね。」
 しゃがんでチャンプルを降ろすミナ。そのまま振り返って地面に正座する。
ミナ
「日輪の方から、邪気が流れてくるの……。かなり、強い邪気が……」
 ミナ、立ち上がる。
ミナ
「確かなことは言えないけど……村を襲ったあやかしに関係があるかも……。ちょっと遠いけど……行かなきゃ……。」
 ミナ、一気に駆けだし、画面右にフレームアウト。やっぱり置いて行かれるチャンプル(ボイス「はわわわわわ〜」)。
 チャンプルもフレームアウトして暗転。
1〜4人目勝利後
1人目:チャンプル……行きましょう。
2人目:邪気はあっちから……。……チャンプル、行くよ?
3人目:チャンプル、少し、休む? 私も疲れたから……ね?
4人目:この雲の流れ……凶兆ね……。
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……いささか場違いな娘さんですが……。迷い込んだ、というわけでもなさそうですね。その服装……もしや琉球の妖滅師。これは珍しい。さて、せっかくです。これも一期一会というべきでしょうか。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」
ミナ「……教えて。今、日輪で……何が起こっているのか……。私の村を襲ったあやかし……何か関係があるのか……。」
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
ミナ「………………ッ! こないで!!」
三九六「クハァーッ! たまんねぇなぁ! いっぺん、若ぇ女をボッコボコに痛めつけてみたかったんだぜぇ!?」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:…………。私に……近寄らないで……。
6人目:このあたりは……あやかしが多い……。急ごう、チャンプル。
7人目:邪気の中心に人々が集まってる……。凶事はさけられない……。
8人目:戦が始まったみたい……。また、あやかしが増える……。
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「おや、意外な方がいらっしゃいましたね。外見で判断すべきではありませんが……三九六が遅れをとりましたか。お尋ねしますが、我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
ミナ「ひどい邪気……! いったい、どんなあやかしを招いているの? 私の村のような惨事、未然に防がなければ……。……チャンプル、しっかり。……ね。」
夢路「残念です。まぁ……期待はしておりませんでしたが。されど、味方でなければ……敵と言わざるを得ません。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
ミナ「この邪気は強すぎる。チャンプル? ……どうしたの?」
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
ミナ「あなたの邪気、強すぎる……何を呼び込んだの? ……手遅れ、ね。妖滅師として、滅するしかない……」
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
ミナ「この邪気……まさかとは思っていたけど闇キ皇……。……チャンプル、あと少し、我慢して。現世に彷徨いしあやかしよ。破魔の弓にて幽世に帰せ!」
死合開始〜決着
エンディング
 黄泉ヶ原。チャンプルが泣きそうな顔で四つんばいになっている。画面が左にスクロールするとセクシーポーズ同じく四つんばいになったミナ。
ミナ「……終わった。私……何してるんだろ……? 村を襲ったあやかしを探しにきて……。戦って戦って……傷ついて、傷つけて……もう、嫌……。チャンプル、仇討ちなんて……もう、あきらめ――――チャンプル?」
 ミナ、顔を上げる。画面が右にスクロールすると、チャンプルが両手両足を広げて仁王立ちしている。
 一瞬震えて、チャンプルを中心に爆発のような閃光。そこには、熊ほどの大きさはある巨大なシーサーと化したチャンプルがいた。画面が更に右にスクロールすると、チャンプルの前に慌てふためく旅人が逃げようとしていた。チャンプルが爪の生えた腕を振り上げると、旅人は逃げ出した。画面が左にスクロールし、立ち上がって矢筒に手を掛けたミナがフレームイン。チャンプル、フレームアウト。

ミナ
「……。……………そう…………だったんだ…………その邪気……忘れてないよ……ずっと……ずっと……強すぎる邪気に当てられて……自分をおさえられなくなっちゃった……?」
 ミナ、矢を三本つがえて弓を引く。
ミナ「この地から流れてきた、邪気のせい……かな?」
 構えたまま、顔を伏せる。
ミナ「信じたくない……。けど……チャンプル……あなたが……」
 顔を上げてチャンプルを見据える。画面右からチャンプルがのしのしとやってくる。
ミナ「私は妖滅師、真鏡名ミナ。チャンプル……あなたを……滅さなければいけない……。」
 チャンプル、大きく吼えて、飛びかかろうと前足を振り上げる。
ミナ
「ごめんね、チャンプル。約束、守るから……。私もすぐ……いくから……。」
 画面が上にスクロールし、真っ白にフェードアウト。
「ずっと一緒にいようね」
 真っ白な画面に血が飛び散る。
 ミナED 了
補足と考察
 零を代表する鬱エンドの一つ。
 誰も信じられなくなった少女と、その少女を慕うシーサーの子供。少女も唯一の友として、家族としてシーサーと行動を共にしていたが、そのシーサーこそが村を滅ぼした怪物だった。彼女の物語を要約するとこうなる。

 ミナとチャンプルのプロフをちょこっと見てみよう。
 ミナ、「好きなもの:チャンプル」、「コンプレックス:ひとりぼっち」、「平和を感じるとき:邪気のない場所でチャンプルと遊ぶとき」。
 チャンプル、「好きなもの:ミナー」、「嫌いなもの:ゆくさー(注:嘘つき)」、「コンプレックス:なちぶー(注:泣き虫)」、「尊敬する人:ミナー」。
 お互いをどれだけ大切にしているかが見て取れる。
 興味深いのはチャンプルの嫌いなものが「嘘つき」だという事だ。この点に触れるため、まずはミナの周辺考察をしてみよう。

 ミナは極度の人間不信であり、男性不信でもある。齢17の少女がここまでなるということは、よほど非道いトラウマを抱えているのだろう。
 月刊アルカディアにのみ掲載された設定を基に考えてみよう。(資料提供:火鳥颯氏)。
 ミナは生まれながらに強い霊力を持っており、琉球王国の神女(いわゆる巫女)として育てられたが、あまりに霊力が強すぎたために人々から疎んじられ、徐々に笑顔を忘れていった。
 チャンプルは13年間もミナと一緒にいる。4歳のミナに拾われたという事になるが、チャンプルが本当にシーサーなのかと聞かれると首をかしげたくなる。だが琉球の人にとってシーサーは守り神で、ただでさえ強すぎる霊力を持った少女がそんなのを連れ歩いていたら……。皮肉な話だが、チャンプルが本当にシーサーだとしたら、ミナの疎外に一役買っている可能性がある。
 そのチャンプルが本性を現した際、ミナは「強すぎる邪気に当てられて……自分をおさえられなくなっちゃった……?」と言う。これが正解だとすると、チャンプルは理性的な時があの丸っこい生物で、理性を失うとシーサーとなって人を襲うと考えられる。
 ならば、チャンプルがミナの村を滅ぼした時はどうだったのだろう?
 妖滅師のミナが村を空けた時に滅ぼしたのだとすると、いつ頃だろうか? 滅んだ村に戻ったミナが、日輪国の方角に邪気を感じたという表記があるため、滅んだ直後に零がスタートしたと考えていいだろう。
 では何故チャンプルは村を滅ぼしたのか。そしてチャンプルの本性はどちらなのか。
 日輪国の邪気に影響されたとも考えられるが、村が滅んだ時には闇キ皇はまだ完全に復活しておらず、その状態の余波でチャンプルがシーサー化したというのは少々ムリがある。というのも、ミナは日輪国へと向かい、闇キ皇の復活も近づいてくるため、邪気は琉球にいる時とは比べものにならないだろう。ということは、琉球という遠い地で余波を浴びただけでチャンプルが暴走したのであれば、この強くなる邪気に耐えられないだろう。
 これはあくまでも私の推測だが、ひょっとするとチャンプルは(邪気の影響もあり)村人のミナに対する悪意に反応してシーサー化したのではないか。もう少し突っ込むと、ミナを悪意から守るために(邪気の影響もあって)自らの意思でシーサー化したのではないだろうか。
 そして、チャンプルの嫌いなもの「嘘つき」、これはミナの村を滅ぼしておきながらミナにそれを言えない自分を指しているのではないか……ここまで来ると暴論だが、そういう可能性はある。
 ミナが村に戻った時、チャンプルは瓦礫の中ミナを探して彷徨っていた(恐らく泣いていただろう)。チャンプルの本性はどちらなのか、恐らく本性は村を滅ぼした怪物だろうが、本心はミナの唯一の友達なのだと信じたい。

 村が滅んだ時のミナの反応は「良い思い出は無い。幼くして家族は疎遠となり、友も無く、人々に疎んじられ――それでも、生まれ故郷はたった一つ。その身を妖滅師として以来、初めてミナは自らの意志で弓を引くことを決意した」とある。
 家族と疎遠という言い回しは少し不思議だが、琉球王国の神女となるべく育てられたのならば、家族から離されて育った可能性もある。家族は死んでいるのではないかとも思うが、幼いうちに疎遠となったのならば、幼子にとっては死んだと同じだろう。その上に友達もおらず、人々に疎んじられるが、村々を守るために命を賭けて戦わなければいけない。なんとも辛い半生だが、その結末は悲しい結果となった。

 最後になったが、ミナの生死は不明である。
 ラストシーンは真っ白な画面に「ずっと一緒にいようね」というメッセージが表示された瞬間、ビシャッ! と血が飛び散って終わりになるが、この血が誰の血かは不明なのだ。ミナの血か、チャンプルの血か、二人の血か。
 今後のストーリー付き作品に出すためには、こうした生きている可能性を残した演出の方がいいのだが、零でミナを使ってクリアした人ならば様々なデモで解るだろう、ミナがどれだけチャンプルに支えられてきたかが。そりゃ戦闘中は五月蠅いから眠らせてはいるが、ミナは自分でも言っているとおり、チャンプルがいなくても耐えられるような人物ではない。ましてや自分の手で殺してしまっては……。私の見解としては、ミナは死んでいるのだろう。恐らくはチャンプルも一緒に。

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