サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察13
派手なのに影薄い編

2005年8月16日執筆:第一稿

千両狂死郎
公式を見てない人用の簡易紹介
 狂死郎一座を率いる歌舞伎役者。
己に出来ることは歌舞伎のみ、飢饉に苦しむ民衆の力となる歌舞伎を目指し、日輪国へ一人旅立つ。
オープニング
山城 無宿村
 無宿村の空から画面が下にスクロールすると、狂死郎が立っている。
狂死郎
「飢饉やら何やら、世の中はめっきり荒みきってしもうたわい。ワシの歌舞でちょうとでも民草に力を与えられぬようではこの名、狂死郎めが泣きまする。」
 狂死郎、唐突に踊り出す(ボイス:あ、ヨッ、ヨッ、アイっ!)。
狂死郎
「父よりゆずり受けしこの舞、更なる飛躍を遂げねばならぬのぅ。世間には、わしの知らぬ全く新しい歌舞がまだまだあるやもしれぬ。本業はしばし休演じゃ。」
 見得を切る(ボイス:べべん)。
狂死郎「浮世にひたって気の向くままに旅をしつつ、真の歌舞を探るもよし。風聞を広めて、次の台本のネタとするもよし。」
 片足立ちになる。
狂死郎
「どれ、どこへ、足を運んでみたものかのぅ。」
 片足跳びで画面右へフレームアウト
(注:片足跳びでの移動はギャグではなく、実際に歌舞伎の技法でも存在する。実際の技法では跳び方によって感情の表現をする)
1〜4人目勝利後
1人目:さてさて、次はどこへ行くかのぅ。
2人目:いまひとつ、ワシの胸に響かぬのぅ。
3人目:期待したワシが愚かじゃったか?
4人目:大根役者とはおぬしのような者を指すのじゃ。
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、千両狂死郎さん。うわさは聞き及んでおりますよ。あなたほどの剛の者なれば日輪の地を目指すも道理でしょう。よい機会です。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」
狂死郎「おぬし、舞を披露してくれるのか。ありがたいことじゃ。ならば、ワシも一指し舞うとするかのぅ。」
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
狂死郎ふ〜む。そこはかとなく品性に欠けておるようじゃなぁ。ワシの舞についてこれるか? ついてこれねば御代は高ぅつくぞぉ。」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:お主程度の舞では、客があきれて帰ってしまうわい!
6人目:相方としてはそれなりじゃな。
7人目:前座ぐらいなら任せられるかもしれんなぁ。
8人目:新しい歌舞伎……もう一息で見えてきそうじゃが。
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。千両狂死郎さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
狂死郎「全てを歌舞伎に奉げましたるこの狂死郎めが何人かに仕えるなどありえませぬ。先は横槍が入りましたるが さてさて、おぬしの舞、あらためてワシに披露してくれんかのぅ。」
夢路「残念です。我旺様が拓く次の時代を供に担えるものと信じておりました 相容れぬならばここで果てるが道理。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
狂死郎「見えてきた見えてきたぞぉ! 新しい歌舞伎の道〜ぃ!」
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
狂死郎「む? なんじゃ。おぬしも、ワシの舞を所望か? ならば、狂死郎歌舞伎刮目して見るがよいぞ!」
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
狂死郎「なんとも黒い気じゃ! 次回の興行、台本は妖怪退治とするもよし! ワシも腹をくくらねばなるまい。命を賭けた我が舞、とくと眼に焼き付けぃ!」
死合開始〜決着
エンディング
 黄泉ヶ原の空から、画面が下にスクロールすると、狂死郎が煙管を吸っている。狂死郎、煙を吐き出して煙管を口から離す。
狂死郎「開眼、開眼せり〜! 此度の旅にて、ワシの新しい歌舞伎……ついに見えたわぃ! 歌舞伎と薙刀、舞と武、それらが融合した姿こそ、この狂死郎めが極めるべき道じゃあ〜! 全く新しい、歌舞伎の生まれし瞬間じゃあ〜! 天晴、天晴!」
 力強く見得を切ると、背後から声が掛かる。
「そう、全く新しい!」
 画面が左にスクロールすると、下は空手着&黒帯、上半身は裸の上に赤い胴丸をつけ、木のブーメランを持った珍妙な男が立っている。
ハヤテ謎の男「俺のこの南蛮渡来のぶうめらんと!」
 更にその背後から声が掛かる。
「このワシの!」
 画面が左にスクロールすると、ハヤテ謎の男の後ろに、黒い袴と半袖の胴着の上に赤い胴丸を身に付けた長髪の男が立っている。
龍白?「このワシの古武術が融合した!」
ハヤテ謎の男「全く新しい武術!」
龍白?「それが!」
 二人同時に片手を天に突き上げる。
二人
「風雲拳!!」
 画面がちょっと右へ移動し、狂死郎が二人の前に跳び込んでくる。二人、手を下ろす。
狂死郎
「おお、おぬしらも新しい己の道を探しておったか。お主らの武術、この狂死郎めの胸にググッと響くものがあるわい。願わくば、このワシの全く新しい歌舞伎と、一指し手合わせ願いたい!」
ハヤテ謎の男「ああ! どちらが全く新しいか勝負だ! いくぜ!!」
 狂死郎とショー・疾風謎の男、同時に跳んで空中で交差する。画面が上へ高速スクロールし、暗転。
 狂死郎ED 了
補足と考察
 零を代表するギャグエンドの一つ。
 覇王丸と旧知だったり、無量寿如来・白珠魂という選ばれた魂を持っていてアンブロジァの兇神化を食い止めるキーマンだったり、将来ミヅキと夫婦同然になって、死ぬ寸前まで舞を続けたという、なにげに格好良い男のはずが、ギャグエンド。
 完全にいらないキャラ扱いなのが解って物悲しい。何せストーリーに微塵も絡まない上、他のキャラとも絡まず、さらにはストーリー的な要素さえ無い。
 旅立った時の動機を忘れたのか、途中からは半ば通り魔と化す。
 不憫にも程があるが、どことなく幻庵や真サムの王虎を思い出させる、伝統と言えば伝統のエンディング。
 登場する男は風雲黙示録のハヤテと龍虎の拳の藤堂竜白に見えるが、誰かは明らかにされていない。気にしてはいけない。
 恐らく竜白に似ている男は真サムの幻庵EDにも登場している藤堂龍白だろう。
 しかし何故に風雲拳?
 歌舞伎は手合わせするものでは無いんじゃ……しかも勝負の内容が「どちらが全く新しいか」ってなんでやねん。
 補足も考察もしようがないという、管理人泣かせのストーリー&エンディング。
 夢路に名前を知られているキャラなんだけれども、多分剣客としてではなく、戦う奇妙な歌舞伎役者として知られているだけなような気がする。
 ある意味、SNKプレイモア制作ではなく、外注スタッフに昔のサムスピファンが集まって作った今作だからこその風雲拳との競演だと言えるのだが、適当すぎるとも言えてしまう。王虎や幻庵とは違って、後にストーリーの中核となる一人で2Dサムスピ皆勤キャラなのだから、もうちょっとマシな扱いにしても罰は当たらないと思うのだが……不憫。
 あまりにも可哀相だから、剣客風説草紙の最終回を貼っておきます。

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