サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察2
風間兄弟と炎邪水邪編

2005年5月10日執筆:第一稿 5月13日加筆:第二稿 5月14日加筆修正:第三稿 5月30日修正:第四稿 9月30日加筆修正:第五稿
2006年1月5日加筆修正:第六稿

水邪 炎邪 風間蒼月 風間火月
公式を見てない人用の簡易紹介
 魔界に封印されていたが、封印を破って十和田と浅間山に現れる。闇キ皇の持つ「人魔一体の法」を奪おうと日輪国を目指す。新キャラ。
公式を見てない人用の簡易紹介
 肥前の穏忍、風間一族の忍者。蒼月、火月、葉月の兄弟妹。兄二人は表面的には仲が悪い。ある魔物を封じるために打たれた刀、青龍と朱雀の力で水と炎を操る。封じるべき魔物の出現により、それらが向かう日輪国へ。
オープニング
十和田 奥入瀬渓流
オープニング
浅間山 百戸村
オープニング
森の中(風間の里)
 渓流の浅瀬に緑の装束を着た一人の風間忍者が立っている。
忍者
「確かにこのあたりから、邪なる波動を感じたが……気のせいであったか……? 拙者の勘違いであれば、それでよいのだが……。」
 忍者の前に波紋が現れ、そのまま波紋だけが忍者の足もとへ忍び寄ってくる。
忍者
「――!?」
 突然足もとから水柱が上がる。
忍者
「うああぁぁぁ!」
 忍者が吹っ飛んで倒れると、水柱が上がった所から人の頭よりも大きい程度の水玉が浮かび上がる。
 水玉は漂うように倒れた忍者の所へ移動し、忍者の身体と重なって消える。倒れていた忍者の身体が水邪の身体へと変化する。
 水邪、身体を起こして立ち上がる。

水邪
「ふむ……。脆弱な体だが……ここは我が妥協しよう。所詮は匹夫の器。我に馴染むいわれもない」
 仰け反って両手を広げる。
水邪
「さぁ、耳があるなら心して聴くがよいぞ、愚劣なる民衆よ。永き眠りより、偉大なる指導者が目覚められたのだぞ? 我は神……! 我を崇めよ……!」
 ふわりと浮き上がると、椅子に座るような姿勢で足を組み、何かを考えるように手を頬に当てる。
水邪「この波動……奴の目覚めも近いようだな……。闇キ皇、貴様の魂……新たなる時代の幕開けを告げるには、いい贄だな」
 椅子に座るような姿勢のまま、空へと浮上してフレームアウト。
 燃えさかる村に、緑の装束を着た三人の風間忍者が立っている。
忍者1「我らが封魔の秘術、試すとき来たり。皆、気を抜くでないぞ!」
忍者2「はっ!」
 画面が上へスクロールすると、空から炎邪が降ってくる。
炎邪「グォオオォオオォオオオ!!!」
 炎邪、ドーム状の光に包まれながら着地。忍者たち身構える。
忍者1「来たか!」
 赤熱した炎邪が地面を大きく踏み鳴らす。不気味にうつむいたままの炎邪。
忍者2「奴がかつてこの地を焦土と化したという妖魔か……」
忍者1「恐れるな! 我らが力……彼奴に刻んでくれようぞ!」
忍者2「臨兵闘者…………………」
 炎邪、大声で笑いながら顔を上げる。
炎邪「ぉおおぉおおおおおおぉぉ!!」
忍者2「くッ……なんと強大な邪気!」
忍者1「しかし、ここで食い止めねば! 奴を決して日輪の地に近づけてはならん! 我ら風間の名にかけてッ!」
 炎邪爆熱。火柱に吹き飛ばされて風間忍者フレームアウト。誰もいなくなった村で、再び炎邪が笑う。
炎邪
「ぐるおおおおおおおおぉ!!!」
 大きく足を踏み鳴らし、赤熱すると、炎を纏った矢のように空へと飛び去る。
 画面が上へとスクロールし、赤く染まった空が映る。
 森の中、蒼月と月心斎が立っている。
月心斎
「遂に……動き始めたようじゃ……」
蒼月「……。」
月心斎「此度の戦い、お前達兄弟にとってつらいものとなろう……火月を呼んで参れ。」
蒼月「はっ。」
 蒼月の姿が消える。画面が右にスクロールして暗転。
 森の中、画面が右にスクロールしていくと、火月と葉月が座っている。
火月「ははははっ。まだまだだな、葉月。」
葉月「もう! 火月兄さんったら。少しは手加減してよ。」
火月「ははははっ。だけど、あんまり手加減しちまったら修行になんねえだろ?」
葉月「それは……そうだけど……もうっ。」
 突然火月の座っていた場所に水柱が伸びる。火月、葉月のそばに飛び退いて、庇うように立ち上がって振り返る。
火月「なんだよ、兄貴。」
 水柱が現れた所から水が立ちのぼり、蒼月が現れる。
蒼月「月心斎様がお呼びですよ」
 火月、葉月に振り返る。
火月
「葉月、修行はここまでだ。先に戻ってろ。」
 画面が素早く左にスクロールして暗転。

 火月が水柱を避けた時、蒼月は手加減したとはいえ良く避けたと、内心で誉めている。また、葉月に「修行はここまで」と言った所では、切り替えの早さにこれも心の中で満足げに頷いている。これらは公式サイトの蒼月ストーリーで確認できる。
 森の中に、画面が素早く左にスクロールすると、風間兄弟と月心斎が立っている。
月心斎
「我らが一族に伝わる封魔の秘術、遂に試される時が来たようじゃ。浅間山、十和田より出でし魔は日輪の地へ向かっておるとの報があった。お前たちは、この者を連れて急ぎ、日輪へ向かえ。」
 火月の背後に葉月が現れる。振り返って驚く火月。月心斎に向き直って、
火月
「なんだって!? 爺! こんな危険な任に葉月は連れて行けねぇ!」
月心斎「葉月の未熟な忍の技はさておきその秘めたる力……此度の任においては欠かせぬ。」
蒼月「承知いたしました。月心斎殿。」
 火月、葉月の方を向く。
火月
「兄貴!? ……ちっ。仕方ねぇ。葉月、お前は必ずおれが守ってやるからな!」
葉月「うん、お願いね。火月兄さん。」
月心斎「では、ゆけい。」
 風間兄弟妹、姿を消す。
月心斎
「火月……蒼月……。己が背負いし宿命に……呑まれるでないぞ……。」
 画面が素早く右へスクロールしてフェードアウト。
1〜4人目勝利後
1人目:奴の目覚めも近いか……ククク、うれしいぞ。
2人目:待っておれ。貴様の魂、この我が貰い受ける。
3人目:愚かな人間どもにはすぐれた指導者が必要なのだよ。
4人目:よって……この我が貴様らの神となってやるぞ。
1人目:ドグゴラァ!!!
2人目:グルジョワ!!!
3人目:グォオオッォオオオ!!!
4人目:ジョラジョアラァ!!
1人目:日輪の地……遂にこの時がやってきましたか。
2人目:急ぎます。
3人目:待っていなさい。私の手で消去します。
4人目:火月、遅いですね。寄り道でもしているのでしょうか。

 後の5人目〜8人目の時もそうだが、火月のものと見比べると、良い兄弟だというのがよく解る。
1人目:一体、日輪で何がおこってやがるんだ!
2人目:へっ、今回は兄貴より先にたどり着いてやるぜ。
3人目:とっとと終わらせて、葉月の作ったメシ食いてぇな。
4人目:寄り道してる場合じゃねぇや。兄貴に追いつかねぇとな!

 後の5人目〜8人目の時もそうだが、蒼月のものと見比べると微笑ましい。
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……なにやら、珍妙な御仁がいらっしゃいましたね……。迷い込んだというのならお引き取り願いましょう。深追いはいたしません。己の意思にて、あえて日輪の地を目指すというのであれば我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」 夢路「おや……その出で立ち、肥前の隠忍……風間一族の方とお見受けします。もしや、風間蒼月さん。……うわさは聞き及んでおりますよ。しかし、あなたが日輪の地を目指す理由、察するに我々には凶事となりかねません。されど、剛の者であることに違いはありません。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」 夢路「おや……なにやら、珍妙な御仁がいらっしゃいましたね……。迷い込んだというのならお引き取り願いましょう。深追いはいたしません。己の意思にて、あえて日輪の地を目指すというのであれば我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」

 蒼月とは違い、炎邪や水邪と同じ扱いである。
水邪「ふむ……なかなか面白いことを言う。よい。退屈しのぎに遊んでやろう。」 炎邪「グオオォォルァァアア! ゴオゥッ!」 蒼月「誉められるのは嫌いではないですが、相手が弱者ではうれしくありませんね。」 火月「へっ! そこをどきな! どかなきゃ消し炭にしちまうぜ!」
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。如何に小さな禍根であろうとも断て それが我旺様の命です。三九六さん。くれぐれも、お願いしますよ。」
 夢路跳び去る。
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
水邪「お前もなかなか面白いことを言うな。よい。褒美に殺してやろう。」
三九六「馬鹿にすんじゃねぇ! ぶっ殺してやる!」
炎邪「ヴァーハッハッハッハ! ヴァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
三九六「馬鹿にすんじゃねぇ! ぶっ殺してやる!」
蒼月「言葉は選んだ方がいいですよ。死期を早めることになりかねませんからね。」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
火月「はははっ! 兄貴より怖い奴がいるかよ! とっとと燃え尽きやがれ!!」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:フッ、神の手で召されるのだ。これ以上の歓喜はあるまい。
6人目:あぁ、聞こえる……我を称える福音が!
7人目:あと少しで、私は完全な存在になるのだ……。
8人目:さぁ、歓喜の声をあげよ! 新たなる神の誕生を祝福せよ。
5人目:ボッッゴラァ!!
6人目:ドララッシュ!
7人目:ブロロロロゲァアアア!!!
8人目:ボングラッドゴラァアアア!
5人目:せめて己の器ぐらい自覚してほしいものですね。
6人目:火月、遅いですね。仕方ありません。……少し待ってあげましょう。
7人目:嫌な気配を感じますね……。
8人目:この強い邪気……。なるほど……もうすぐ、と言うわけですね。
5人目:次はもっと強くなってやがれ! いつでも受けてたつぜ!
6人目:くそっ! 俺だって急いでるのに兄貴の影も見えやしねぇ。
7人目:なんだか、嫌な気配がしやがる。
8人目:この邪気……封魔の術が苦手な俺にも伝わってくるぜ。
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「おや、意外な方が……。素性の知れぬ輩ではありますが……剛の者であることにはちがいありませんね。お尋ねしますが、我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。風間蒼月さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「おや、意外な方が……。素性の知れぬ輩ではありますが……剛の者であることにはちがいありませんね。お尋ねしますが、我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
水邪「人が家畜に仕えるなど有り得ることか? その逆は然り。愚鈍な貴様らが我に平伏するのだ。今ならば重用することを約束してやるぞ?」 炎邪「グガアァッ! ゴウゥッ! ガァァァアアオオオオオ!」 蒼月「愚問ですね。もう少しましな事を言うのかと思いましたが答える気にもなりません。」 火月「断る! どうしてもってんなら俺を倒してみな。だが、火傷程度じゃすまねぇぜ!」
夢路「残念です。まぁ……期待はしておりませんでしたが。されど、味方でなければ……敵と言わざるを得ません。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」 夢路「残念です。我旺様が拓く次の時代を供に担えるものと信じておりました 相容れぬならばここで果てるが道理。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」 夢路「残念です。まぁ……期待はしておりませんでしたが。されど、味方でなければ……敵と言わざるを得ません。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
水邪「これが貴様の運命だ。」 炎邪「グジジジンゴゴゴガァーーー!」 蒼月「邪魔ですね、我旺。さっさと消してあげましょう。」 火月「我旺ってのはもっと強いのかよ。熱くなってきやがる。」
 任務……忘れてる?
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
水邪「くくく……感じるぞ! 我らが探し求めた秘術の力を……!」 炎邪「ゴルァ! オオオォォオォオオォォォォ……!」 蒼月「あなたの考え、わからなくもないですが今は邪魔ですね。消去します!」 火月「あんたが我旺か! まわりくどい前口上はいらねぇ。さっさとやろうぜ!」
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
水邪「ククク……貴様に宿りし人魔一体の秘術! この我が貰い受けよう! 闇キ皇よ、貴様はすでに用済みだ。我を崇めるならば生かしてやらんでもないぞ?」 炎邪「ボッッゴラァ!! グォオオッォオオ!!! ガァッ!!!!!」 蒼月「我旺。それが貴方の言う真のますらおですか。呆れて笑みもでませんね。深き業! あの世で後悔しなさい!」 火月「こいつが爺の言ってた魔の正体か。どうやら、言っても聞いてくれそうにねぇや。すべて燃やし尽くしてやるぜ!」
死合開始〜決着
エンディング
 地獄絵図の戦場の空から画面が下にスクロールする。
 地獄絵図の戦場に炎邪と水邪が立っている。
水邪「闇キ皇に宿りし人魔一体の秘術……ついに! ついに遂に手に入れたぞ。我らが完全な存在となるときが来たのだ!」
炎邪「ぐるじおっ!」
 炎邪、嬉しそうに大地を踏み鳴らすと炎に包まれて何処かへ飛んで行く。
 水邪、嬉しそうに少し浮く。
水邪
「フフ、聞こえるぞ……! 我を称える歌声が……! 感じるぞ……! 神が君臨する、新たなる時代の幕開けを……!」
 着地して、仰け反りながら両手を広げる。
水邪
「我が肉体よ……我に相応しく清め祓て待っておれ。今、ゆくぞ!」
「その必要はありませんね」
 水邪が声の方を向くと蒼月が現れる。
水邪
「ほう? 良い心がけだな……。我の贄となるべく、自らその身を捧げに来たか。存分に鍛え、傷も無い。我が肉体として申し分ない……これこそ我に相応しい器。さぁ……我と同化せよ! 我と交わり永久に生きようぞ!」
 大きく仰け反り両手を広げる。
蒼月
「同化は結構ですが……消えるのは貴方の方ですよ。」
水邪「愉快なことを言う。冗談の感覚もすぐれておるな。愛い奴よ。よい、満足だ。」
蒼月「私が何の策も弄さず、いたずらに月日を過ごしたとお思いですか?」
水邪「……何だと?」
 蒼月の後ろに葉月出現。仰け反っていた水邪、ようやく風間兄妹に向き直る。
水邪
「まさか……その娘は!?」
蒼月「闇キ皇ならまだしも、貴方程度の雑魚の力をおさえるなら造作もないこと。葉月の持つ封魔の力……とくと味わいなさい。――葉月!」
葉月「はい! 蒼月兄さん!」
 葉月が顔の前で手を組んで目をつむると、体が緑色に光りだす。
 水邪は膝をつき、身体から水玉が分離する。

水邪
「我は神だぞぉぉおおぉおお!! 貴様如き、人間如きにぃぃぃいいややああぁぁああ!!」
 一瞬で身体から肉が消えて骸骨になり、骸骨も崩れながら風化していく。残ったのは衣服と浮遊する水玉(水邪の核)のみ。
 蒼月が一族に伝わる刀、青龍を出すと、水玉が引き寄せられていく。
 青龍に水邪を封じ込めると、蒼月は青龍を一拭きして鞘に納めた。

蒼月
「まったく……貴方の自惚れの酷さときたら、心無い人間のようでしたね。もっとも、そうでなくては神の名など語りはしないでしょうが。」
 一拍置いて、
 画面が上にスクロールして、戦場の空へ切り替わる(地獄絵図版ではなく、通常の戦場)。画面が下へ移動すると、火月が空を見上げている。
火月「葉月! どこだ葉月!! はぐれちまった! くそっ!」
 炎を纏いながら炎邪が火月の前に降り立つ。
炎邪「ぐおおぉおおぉぉぉおぉぉ!!」
火月「くっ! 何だコイツは!? とんでもねぇ邪気だけどよ……そこをどきやがれ! 邪魔だ!」
 炎邪が火月に突進し、薙ぎ払う。火月吹っ飛んでフレームアウト。
火月「うはぁ!! は……葉月ぃぃぃ……。」
 画面が上にスクロールして、戦場の空へ切り替わる(地獄絵図版ではなく、通常の戦場)。画面が下へ移動すると、火月が空を見上げている。
火月「葉月! どこだ葉月!! はぐれちまった! くそっ!」
 炎を纏いながら炎邪が火月の前に降り立つ。
炎邪「ぐおおぉおおぉぉぉおぉぉ!!」
火月「くっ! 何だコイツは!? とんでもねぇ邪気だけどよ……そこをどきやがれ! 邪魔だ!」
 炎邪が火月に突進し、薙ぎ払う。火月吹っ飛んでフレームアウト。
火月「うはぁ!! は……葉月ぃぃぃ……。」
 画面が素早く上にスクロールしてフェードアウト。
蒼月「消去……完了です。」
 水邪ED 了
 炎邪の身体が消えて火の玉が現れる。
 画面が右にスクロールし、倒れている火月の元へ火の玉が飛んで行く。
 火の玉が火月の身体に重なって消える(火月の身体に入り込む)。火月、起きあがるが急に震えだす。
 火月の前に月心斎
ら三人の風間忍者が現れる。
月心斎「人魔一体の法、その術中にあってはその力、存分にはふるえぬ! 勝機は我らにあり! 封魔の法もはや抜け出すことかなわじ! 火月殿……許されよ!」
 火月が叫ぶと身体から火柱が上がり、炎邪爆熱。月心斎ら吹き飛ぶ。
 画面がわずかにスクロールし、倒れる月心斎が中心に。
月心斎「ばっ、ばかなぁ! 炎邪が肉体を手に入れし今……我らの打つ手は尽きた……。もはや……この國が焦土と化すのは時間の問題であろう。やはりあの時、兄弟を消しておくべきであったか……。我が一族の悲願……ここに終いえたり……む、無念……なり……。」
 火月の身体を得た炎邪、叫ぶ。
炎邪「ヴァーッハッハッハッハッハ!」
 画面が上へスクロールし、戦場の空が映る。
 炎邪ED 了

 グラフィックが月心斎と同じなだけで、本人であるとは明記されていない。この件の後も月心斎は生きている。
 地獄絵図の戦場の空、画面が下にスクロールすると、蒼月と葉月が立っている。
蒼月「消去……完了です。」
葉月「それより、火月兄さんは……。」
蒼月「そうですね。近くにいると思いますが……行きましょう。手間のかかる弟ですね。」
 蒼月、身構える。
蒼月
「この邪気は……まさか!? ……行きますよ葉月!」
葉月「はいっ 蒼月兄さん」
 二人の姿が消え、暗転。
 戦場の空に画面が切り替わり、下にスクロールすると、火月が叫んでいた。
火月「おおおおぉぉおぉお……ッ。」
 そこに蒼月が姿を現す。
蒼月「愚かな……邪の力に屈しましたか。仕方ありませんね。こうなれば火月の体ごと消去します。」
 火月(炎邪)、身構える。二人は同時に斬りかかり、交差して静止する。
 火月、地面に倒れるがすぐに膝をつく。蒼月、火月に向き直る。

蒼月
「く……急所を外しましたか? いつもの火月の動きではないですね……。」
 とどめを刺そうと一声発し、火月の背に斬りかかろうとするが、二人の間に葉月が現れ、蒼月は刃を止める。
葉月「やめて! 蒼月兄さん!」
蒼月「お前もわかっているでしょう? 火月をこのままにしておけばどうなるのか……どきなさい。」
 葉月、膝をついて火月に寄り添う。
葉月「その為に私がいるの! だから、だから……。」
蒼月「どうしてもというのでしたら、葉月、お前とて容赦はしませんよ。」
 蒼月が刀を引くと同時に、葉月が顔だけで振り返る。
葉月「蒼月兄さんのわからずや!」
 葉月、立ち上がると祈るように顔の前で手を組み、目を閉じる。
 葉月の体が緑色に光り出すと、火月が倒れる。それを見た蒼月は構えを解く。
蒼月「まぁ……いいでしょう。ですが今回限りですよ、葉月。」
 葉月、祈るポーズのまま蒼月に向き直る。
葉月「ありがとう……蒼月兄さん。」
蒼月「ですが、また覚醒するようなことがあれば……いいですね?」
 葉月、両手を後ろに回して、
葉月「う、うん……。わかってる。でも、火月兄さんだもん。大丈夫!」
蒼月「フフ……そうですね。私は一足先に里へ帰ります。戻ったら火月に牡丹鍋をつくってあげて下さい。」
 蒼月の姿がかき消える。
 画面が上へスクロールして、暗転。
 森の中、右へスクロールすると蒼月と月心斎が立っている。
月心斎「此度の活躍、見事であった。もし、あやつらが完全に覚醒しておったら……。じゃが、もうその心配も無用。炎邪と水邪の力を封じし今、封魔の術を継ぐ我らの役目も。終わりと言うわけじゃな。葉月の力も……二度と使われることはあるまいて。これからはお前達兄弟、平穏に暮らすがよい。ふぁっふぁっふぁ……。」
蒼月(まったく甘いですね……。)
 画面が左へスクロールしてフェードアウト。
 
蒼月ED 了
 真っ白な世界の中、葉月の声だけが聞こえる。
葉月
「兄さん……兄さん……やだよぉ……死なないで兄さん……。」
 画面が森の中に切り替わり、右へスクロールすると、うつ伏せに倒れた火月を、そばに座った葉月がのぞき込んでいる。
火月
「う……うぅん。」
 火月が倒れたまま寝転がってあお向けになる。
葉月
「あっ! 目が覚めた? 兄さん!」
火月「くそっ! いったい……俺はどうしちまったんだ……。」
 葉月、祈るように顔の前で手を組んで目を閉じる。
葉月
「あぁ……よかった……。ほんとに死んでるのかと思っちゃった……。」
 顔を伏せて涙を零す。
葉月
「もう……心配ばっかりかけて……! 兄さんのばかばかばかばかぁ!」
火月「おいおい、やめろよ……悪かったってば。でも……あの時、たしか化け物に……」
 火月、おもむろに飛び起きる。
火月
「っ!? くそっ!! あいつ! ぶっ倒してや……る……っ! ……くぅ……痛ぇ……。」
葉月「無茶はやめて、兄さん。ひどい怪我なのよ。」
 火月立ち上がって、片膝をついている葉月に向き直る。
火月
「悪かったな……。葉月……お前のことちゃんと守ってやれなくって。」
 葉月も立ち上がる。
葉月
「ううん、そんなことないよ。無事に任を終えられたもん。ありがとう、火月兄さん。ね、早く里に帰りましょ。兄さんの大好きな牡丹鍋つくってあげるね。」
火月「よし! 帰るぞ、葉月! 葉月の牡丹鍋はうめぇからな! 腹減ったなぁ! 急ぐぞ!」
葉月「うふふふ。もう……。たくさん作るから全部食べてね、火月兄さんっ。」
 そう言って二人とも姿を消す。
 
火月ED 了

補足と考察

 炎邪、水邪、火月、蒼月(、葉月)との人柄がとても良く伝わる優れた構成。
 少々ややこしいので、時間軸をからめてストーリーと設定をかみ砕いて考察&紹介してみましょう。
 まず、炎邪と水邪。
 彼らは封印されていた魔物です
(剣客伝で元は人間で、雲飛を封印した8人の弟子の2人だったと判明)。精神体なので、実体――つまり肉体を持っていません。長い間地上にいると消えてしまうため、定期的に人間の女に子供を産ませては、その子供の体を乗っ取るという事を繰り返しています。彼らがそんな現状に満足しているのかと言うと、否。神を自称する水邪が7人目勝利時に「あと少しで、私は完全な存在になるのだ……」と言っている事から、『自分が完全ではないと思っている』という事が解ります。
 彼らの目的である『人魔一体の法を手に入れる』とは『肉体を手に入れて完全な存在になること』という事になります。
 更に突っ込んでいくと、炎邪は人語を喋っていませんが、知性はあります。PS2版サム零の説明書に『人間の言葉や思考を理解する』と明記されています。その直後に気にも止めずに水邪に任せると書いてありますが。なお、この零から4年後が舞台の《アスラ斬魔伝》の火月エンディングで、火月に語りかけるシーンがあります。
 こんな彼らですが、旧友です。ここで気になるのは、炎邪は頭脳労働を水邪に一任していますが、神を自称する水邪は本当に友と思っているのか。その疑問を解くのは、水邪の「我らが完全な存在となるときが来たのだ!」というセリフ。炎邪&水邪のエンディングに共通して出てくるセリフですが、先ほども紹介した7人目勝利時の「あと少しで、私は完全な存在になるのだ……」とは違い、共にいる炎邪を意識した言葉になっています。ちなみに7人目勝利時のみ一人称が「私」ですが、これが表記揺れなのか、それとも本心からのセリフなのかは不明です。このセリフのみが本心で、他のは理想を演じているという解釈も面白いかも知れません。
(後日注:剣客伝で追加された「元は雲飛に師事する"8人の弟子"」という設定により、彼らが「旧友」である事に説得力が増し、この水邪の「あと少しで、私は――」というセリフにちょっとしたドラマ性が生まれている)
 彼らは「人魔一体の法」を奪おうと考えていますが、闇キ皇との戦力差で言うと闇キ皇の方が上です。何せ彼らが封印を解けたのは、闇キ皇の波動で封印が弱まったくらいです。蒼月にも「闇キ皇ならまだしも、貴方程度の雑魚――」といった事を言われてしまっています。公式小説で明らかになる事ですが、まだ覚醒もしていない闇キ皇の戯れで浅間山の噴火が起こったとあるので、その力はかなりのものでしょう。
 彼らは風間一族に伝わる二振りの刀、青龍と朱雀に封印されてしまいましたが、この二刀は古くから水邪と炎邪を封印するターゲットに見据えて作られ、封魔の術を持つ風間一族に伝えられたものです。なおかつ、蒼月は随分と昔から水邪が出現した際の対策を考えていたようですし、葉月の封魔の力もとても高いと来れば、封印されてしまっても仕方がないのでしょう。ちなみに、水邪は完全に封じられてしまいましたが、炎邪は火月とどこかリンクしているようで、後に力を貸すような関係になります。

 続いては風間兄弟妹。
 この兄弟妹、すでに結末はゲーム外で発表されているせいか、過去話である今作では終着点が見えている分、そこへ向かうまでの道を補強する事に尽力されている気がします。

 蒼月と火月のオープニング補足は、既にオープニングの時点で行っていますが、サム零に限らず彼ら兄弟妹のやり取りは一見しただけでは「冷酷で陰険な兄、直情的で考えなしの弟、心優しく庇護を受けるばかりの妹」と成りかねません。ところがどっこい、彼らの関係はとても兄弟愛に溢れているのです。
 冷徹な兄、直観的な弟、優しくも芯の通った妹、端的に彼らを表わすならばこれが的確かと思います(注:冷徹は誤用されがちですが誉め言葉です。冷静に物事を鋭く深く根本まで見据えるという意味)。
 蒼月は冷たく見えますが、「火月、遅いですね。寄り道でもしているのでしょうか」や「火月、遅いですね。仕方ありません。……少し待ってあげましょう」など、弟が見てないのを良いことにお兄さんっぷりを密かに発揮しています。
 対する火月は兄を嫌っているように見えますが、「はははっ! 兄貴より怖い奴がいるかよ!」と何とも言えない微妙な敬いを見せています。ただ、兄弟共に顔を合わせているときには仲が悪そうなセリフばかりですが。
 この間に上手く入っているのが葉月でしょう。
 蒼月のプロフィールには「好きなもの:葉月の作る料理」、「平和を感じるとき:火月と葉月を遠くから見守っているとき」、「好みのタイプ:火月と葉月が完全に離れていったら考える」とあります。ちゃんと火月の名前が入っている上、「遠くから見守っているとき」というのが何ともにくい(笑)
 火月になると、「好みのタイプ:葉月」と断言してます。この2年後には火月は葉月を守るために抜け忍となり、後に蒼月の影からの援護で葉月と二人ひっそりと暮らす事になります。
 さて、元々「両親不明」だけど「実の兄弟」であるこの風間兄弟に、炎邪と水邪が父という設定が加わり、混乱を加速させてしまっています。
 旧作の設定では彼らは「実の兄弟」と明記されていました。3Dサムスピこと侍魂では出生地が「渡橋の下」となっており、「橋の下で拾われたor河原で暮らす貧困層もしくは被差別民に生まれた」と判明します。しかしなお「実の兄弟」という設定も継続しています。
 今作では「両親不明」ながらも父親を示唆する存在がいます。それが炎邪と水邪。
 アルカディアに載った資料には20年ほど前に人間の女に産ませた蒼月、火月を探しているとあり、PS2版サム零の説明書にも蒼月と火月の体を探しているとある。ここから、彼らの父親はそれぞれ水邪と炎邪という事になるため、血縁があるならば母親が同じという事になるんだけど……兄弟の年齢が2つ離れている上、葉月は更に2つ離れているので、2年ごとにご出産という事になってしまう。今のところ葉月の父が魔界の者という設定はないけど、兄たちの父たる水邪と炎邪の性格がアレなので、うまく人間の青年を演じて近づくというのは無理っぽい。彼らの母が同一人物だとすると、そんな奴らの子供を立て続けに産まされて、更に葉月までご出産とは少々考えにくい。

 しかしに旧来の設定を遵守するのであれば、
1.風間兄弟の母は河原に住む貧困層もしくは被差別民。
2.水邪様降臨。昔生ませた依代に憑依。
3.母、水邪の乗り移った男性と子をもうける。
4.水邪、精神体になって魔界へ帰る。依代の男性は死亡。
5.炎邪現る。昔生ませた依代に憑依。
6.母、炎邪の乗り移った男生と子をもうける。
7.炎邪、精神体になって魔界へ帰る。依代の男性は死亡。
8.母、後に葉月の父となる男性と出会い、葉月をもうける。
 ってな流れになるかと。これだと彼らの母が恋愛によって子をもうけたという説明も出来ますので、そう考えた方が幸せです。その場合は愛した男性が次々に死ぬ悲運な人になりますが。
 SNKに限らず設定は随時後付けで変わってしまうので、「こういう事です」と断言出来ないのが頭を悩ませます。

 話が少し逸れましたが、零の作中でも蒼月と火月はお互いを意識したセリフが多く見られます。お互いのコンプレックスも、蒼月は「火月の底知れぬ能力に嫉妬している」、火月は「手合わせで兄貴に勝てないこと」となっています。これは裏返せばお互いの力を認めているという事になるんですけどね。事実、火月は先述の通り「兄貴より怖い奴がいるかよ!」と言っていますし、蒼月は炎邪に支配された火月を殺そうとした際の葉月とのやり取りで、「でも、火月兄さんだもん。大丈夫!」という葉月の言葉に「フフ……そうですね」と、認めるような(そして兄らしい)反応をしています。この点にもう少し突っ込むと、蒼月は葉月の前では兄らしさを隠そうとせず、葉月も火月以上に蒼月の真意を理解しているという事でしょう。

 そして、一番私が気に入っている演出。場面は蒼月&火月のエンディング終盤です。
 まずは蒼月の葉月に対する「私は一足先に里へ帰ります。戻ったら火月に牡丹鍋をつくってあげて下さい」というセリフ。
 そして葉月の火月に対する「早く里に帰りましょ。兄さんの大好きな牡丹鍋つくってあげるね」というセリフ。
 ここに蒼月のプロフィールの「特技:牡丹狩り」という設定を照らし合わせます。
 牡丹とはイノシシの事ですので、牡丹鍋は猪鍋という事です。
 蒼月は牡丹鍋を作ってあげろと言いますが、生の猪肉がそう都合良くあるわけでもなく、葉月が簡単に猪を狩れるはずもありません。
 さてさて、
牡丹鍋を作ってあげろ+蒼月は一足先に里へ帰った+蒼月の特技は牡丹狩り=蒼月は一足先に帰って、牡丹鍋の材料(猪)を狩りに行った、という事にはならないでしょうか?
 ついでに、蒼月の好きなものは「葉月の作る料理」、火月の好きなものは「牡丹」です。もはや火月が里に帰った夜の食卓は想像するにかたくありません。
 なんとも微笑ましい、良い家族だなぁ、と思うわけであります。

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