サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察6
幻十郎&三九六編

2005年5月19日執筆:第一稿

牙神幻十郎 萬三九六
公式を見てない人用の簡易紹介
人を斬る事を生業とする剣士。覇王丸とは同門だが憎んでおり、会えば殺そうとする。遊郭に居ることが多く、博打を好む。幼少時、母に背中から斬られたという刀傷が今でも大きく残っている。その後、母は自分の手で殺した。
公式を見てない人用の簡易紹介
少し前に世を騒がせた鬼「斬紅郎」の名をかたる小悪党。三人の手下、一八(いっぱち)、五七(ごしち)、二四(ふよ)で相手を奇襲し、自分は大木槌や短筒で相手を攻撃するという卑怯な手ばかり使う。そのくせ、自分は世界最強だと信じている。新キャラ。
オープニング
山城 無宿村
オープニング
山城 無宿村
 空から画面が下にスクロールすると、幻十郎とボロ布を身に纏った男が立っている。
ボロの男
「御高名な幻十郎先生でいらっしゃいますかね……。へへへ……。」
幻十郎「ん? 何用だ。」
 幻十郎、ボロ布の男に振り返る。
ボロの男「お仕事をですな、お頼みしとうございまして……へへへ……。」
幻十郎「……言ってみろ。」
ボロの男「日輪國領主、兇國日輪守我旺……殺っていただけませんか? へへへ……。」
幻十郎「うさん臭いことをぬかすボロめが。何を企む!」
ボロの男「た、企むも何も、我旺を殺したいってヤツはごまんとおりますよって……へへへ。あっしはそんな連中を代表して幻十郎先生に……へへへ。御代は、皆で出し合って……これ、このとおり、これぐらいで……へへへ。」
幻十郎「フン……よかろう。退屈しのぎにはなろう。ただし、貴様……この俺を裏切ろうものならば」
 幻十郎、刀を構えて一歩前へ出る。
幻十郎「……殺ス。」
ボロの男「め、めっそうもございません、我旺を殺っていただけるという幻十郎先生を……へへへ。」
 幻十郎、構えをとく。
 空から画面が下にスクロールすると、幻十郎とボロ布を身に纏った男が向き合って立っている。
幻十郎「フン……。」
 幻十郎、背を向けて走り去る。
ボロの男「うへへへへへへへ……。」
 画面が上にスクロールしてフェードアウト。
 一八、二四、五七の三人、ボロを纏った人物の元へ跳んでくる。
手下達「三九六様! お疲れ様でした!」
 三九六、ボロを捨てて笑い出す。
三九六「巧くいったようだな。流石は俺様! 舞台役者もイケるんじゃねぇかあ!?」
五七「もちろんでごわす!」
一八「天才は何をやってもカンペキでやす!」
二四「狂死郎一座が放っておきませんよ!」
三九六「そうだろう、そうだろうともよぉ! が〜はっはっはっは!」
 三九六、笑うのをやめて、
三九六
「……さて、ああは言ったが、これっぽっちも金なんざありゃしねぇ。てめぇら、俺様のために金の都合つけてこいや。」
手下達「わかりました!」
 三人、跳び去る。
三九六
「ほな、俺様もぼちぼちやったるかいのぅ。」
 再び大笑いする。
三九六
「その辺の奴でも身包み剥いで適当に巻き上げるか!」
1〜4人目勝利後
1人目:雑魚めが。
2人目:ゴミめが。
3人目:カスめが。
4人目:クズめが。
1人目:チッ。しけてやがる。
2人目:命が惜しけりゃ金作ってこいや。
3人目:貧乏人に用はねえ!
4人目:身包み剥いで売り飛ばす手間も考えやがれ。
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、牙神幻十郎さん。うわさは聞き及んでおりますよ。しかし、あなたが日輪の地を目指す理由、察するに我々には凶事となりかねません。されど、剛の者であることに違いはありません。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」 夢路「おや……三九六さんではありませんか。さっき良く似た人を見かけた気もしますが……まぁ、それよりもお役目は順調に進んでいますか? よもや我旺様のご期待に応えられぬようなことはないと思っておりますが……」
夢路(密偵からの情報で行動は筒抜けですけどね……)
幻十郎「我旺とやらの犬か。貴様らごときに尻尾を振るなどこちらから願い下げよ!」 三九六「が〜はっはっは! まかせとけ! まかせとけって!」
三九六(テメェの相手なんざしてる暇ねぇんだよ! 我旺よりも金や、金!)
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。如何に小さな禍根であろうとも断て それが我旺様の命です。三九六さん。くれぐれも、お願いしますよ。」
 夢路跳び去る。
 ステージに画面が切り替わって三九六と同じ濃い顔がバストアップで登場。
三九六?「ちょっと待てぇ! やっと見つけたわい! 忘れたとは言わさんぞ! ――兄貴ぃッ!!」
 夢路の前に三九六の弟が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「……? 三九六さんがふたり? これは面妖……な…………その、なんですか、私はお役目の最中ですのでこれにて失礼……。」
 夢路跳び去る。
幻十郎「……ん? 貴様……」
三九六「なんだ、てめぇ? 俺様の顔に見惚れたかぁ? それでもてめぇはぶっ殺してやる!」
三九六「夢路お得意の幻覚じゃなきゃ……まさか、弟!? 弟よッ! おとうとよおぉッ! 金! 金よこせ! 俺様に貢げ! 身包み打って俺様に貢げ!」
三九六の弟「兄貴ィ! この下衆野郎! よくも弟の俺さえも売り飛ばしやがってえぇぇッ! あの日の恨み、今ここで晴らしたるわい! ぶっっ……ッ殺してやる!!」」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:フン、我旺とやら……楽には殺さんぞ。
6人目:殺す価値もないわ。
7人目:なかなかの斬り応えだ。
8人目:斬らずにはおれんな。
5人目:こ、こいつ、無一文かッ!?
6人目:どいつもこいつも文無しか! ちぃーとも金貯まらんわ!
7人目:このまま金貯まらんかったら俺様、幻十郎の奴に殺されてしまうんか?
8人目:金……幻十郎……我旺……。殺る前に殺るんがこの世の掟やしなぁ。
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。牙神幻十郎さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「……どこへ行くつもりですか? あなたの行動は監視させていただきましたよ。我旺様の忠臣として尽力していれば幕僚として労いもしますが……。」
幻十郎「阿呆ゥが! 我旺も殺ス! 貴様も殺ス!」 三九六「おうおう、夢路。随分じゃねぇか。長旅から戻ってきたってぇのによ。けッ。ばれちゃあしょうがねぇ! 世の中金よ、金! とりあえずテメェをぶっ殺して身包み剥いでやるわい!」
夢路「残念です。我旺様が拓く次の時代を供に担えるものと信じておりました 相容れぬならばここで果てるが道理。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」 夢路「思い上がりも甚だしい。我王様の戯れで飼われていた身の程で……。では、お別れですね。最後ですので申し上げますが……私はあなたのことが嫌いでしたよ。黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
幻十郎「阿呆ゥが! 楽に死ねると思うな!」 三九六「やべぇ。夢路しばいてもうたら言い訳できんわい……。腹くくって我旺の命取ったる!」
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「三九六か……。夢路がうぬごときに不覚をとろうとはな。」
三九六「が〜はっはっはっは! 俺様を一体誰だと思ってやがる? 手前ぇの探し求めた剛の者! 真のますらおたぁ俺様のことよ!」
我旺「所詮は畜生にも劣る野良者よな。手元に置くも一興かと思うたが……戯れが過ぎたか。夢路の手を煩わせようとはな。三九六、うぬの首を以て夢路に報いねばなるまい!」
三九六「俺様を誰だと思ってんだ? 鬼と恐れられた、三九六様よ! 覚悟はええか? ぶっ殺してやる!」
我旺「世に媚び、俗に流れ、権に屈し、利に走る――うつけが! その腐れた性根で三途の鬼に傾いてみせい!」
幻十郎「貴様が我旺か。殺ス!」
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬ如きにしては思ったよりもやりおるわ 一応、礼を言おうぞ。この度し難き怒り……最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! うぬ如きに遅れをとっては夢路にあわせる顔もない! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
幻十郎「フン……。人外の化生を斬るも一興か。……殺ス!」 三九六「なんじゃこりゃあ!? そんなの反則だろうが! 正々堂々戦わんかい! てめぇ、ぶっ殺してやる!」
死合開始〜決着
エンディング
 戦場の空(地獄絵図版ではなく、通常の戦場)から画面が下にスクロールすると、三九六が金の入った巾着をもてあそんでいる。その近くには倒れた侍。
三九六
「……チッ。しけてやがるなぁ。」
 そんな三九六に声がかかる。
「三九六様、お待たせしました!」
 一八登場。
一八
「すぐばれそうな偽金を造ってみやした!」
 五七登場。
五七
「茶屋で働いてきたでごわす!」
 二四登場。
二四
「……が、がんばってきまし……た」
三九六「まだ足りんな。一気に稼げる方法は……」
 三九六、振り返る。
三九六
「ん? ……おッ! こいつぁ使えるわい!」
 画面が右へスクロールして暗転。
 黄泉ヶ原に移り、右へスクロールすると、黄泉ヶ原の標の前に、慶寅と十兵衛が立っている。
慶寅
「十兵衛、お前、いいところで邪魔しやがって……」
十兵衛「双方互角、決戦の末、相打ちとなり命を落せばそれは敗北にございます。ご自身の立場を考えていただきたいなどとは申しませぬが 野暮用で命を粗末にされてはかないませぬ。この十兵衛を恨むことで溜飲が下がるのでしたら如何様にでも恨んでくだされ。」
 画面外から凄い勢いで三九六が走って現れ、いきなり土下座する。十兵衛振り向く。
三九六
「徳川のダンナ! へっへっへ……。此度の戦、見事勝利を収められたご様子。いやはや、しかしですな、ご存知ですかな? 我旺を討ち取ったのはこの私。最大の功労者はこの私! いやいや、恩賞など結構。これよりは徳川に忠誠を――」
 慶寅振り向く。
慶寅
「アンタがアイツを討った? へぇ……。アイツ、人材に恵まれなかったんだな。」
十兵衛「慶寅様、この者は……」
慶寅「ああ、そうだな。わかってる。――アンタのやってることは、漢のやることじゃねェ。」
 三九六立ち上がる。
三九六
「チッ! ばれちまっちゃしょうがねえ!」
 銃を取り出して、慶寅に構える。
三九六
「恩賞ががっぽりもらえりゃあ それで済ませてやろうと思ってたが 身包み――あら?」
 十兵衛一振り。三九六吹っ飛ばされ、画面もそれを追うように左へスクロールして暗転。
 山城の無宿村の空から画面が下にスクロールすると、倒れた三九六と一味がいる。

三九六
「タイマン張ってヘロヘロのボンボンから巻き上げたろ思うたが…………とりあえず、幻十郎にゃなんとか金を払わんでやり過ごしつつ、長い付き合いにしねぇとな。いざとなりゃ一八の偽金で水増しするか。」
 三九六、立ち上がる。
三九六
「さて、ちょっくら行ってくるわい。」
手下達「三九六様、お気をつけて!」
 走り去る三九六。画面は上へスクロールし、無宿村の空で固定。

 無宿村の空から画面が下にスクロールすると、幻十郎とボロの男が向き合っている。
ボロの男
「へっへっへ……。さすがですなぁ、幻十郎先生。……へへへ。」
 男が僅かに踏み出す。
幻十郎
「……。」
ボロの男「御代をお渡ししませんとな。あと、次のお願いもありまして……へへへ。」
幻十郎「次は貴様の番だ。」
 男が僅かに後ずさる。
ボロの男
「な、何をなさいますか!?」
幻十郎「貴様の目玉は硝子玉かもしれんが、俺も同じと思うな!」
 幻十郎が斬りかかると、男はボロを脱ぎ捨てながら半身になってかわす。ボロを取った男は三九六だった。三九六、少しひるんだ様子で、
三九六
「悪かった! 謝るってばよ! 我旺がいなくなりゃあ俺様の天下だぜ! おっしゃあ! 一緒にやりたい放題しようぜ! な! いい話だろ! おい!」
 幻十郎、一歩前へ。
幻十郎
「くだらんな。死ね。」
 三九六、一歩後ろへ。
三九六
「ま、待て! 俺はお前の親父のことを知ってるんだぜ!」
 幻十郎、刀を構える。
三九六
「あのあばず……ゴホンゴホン、お前の母親のことだって知ってるんだぜ! 知りてぇだろ? 知りてぇだろ? 知りて……えぇ!?」
 幻十郎、一声発して斬りかかる。三九六、後転して避ける。
幻十郎
「次は外さん。」
 画面左から、二四、五七、一八ら三九六の手下が現れ、三九六を囲む。
二四
「三九六様を斬らないでください! お願いします!」
三九六「は、はははは! さすがに女は斬れんだろ。ど、どうだ? これでも俺を斬れるか、アァ?」
 幻十郎、構えを解いて背を向ける。
幻十郎
「殺す価値も無い奴よ……失せろ!」
 一瞬振り返ってまた背を向ける。三九六、じりじりと幻十郎に近づきながら、短筒を抜く。
三九六
「ほな、さいなら〜。」
 引き金を引く。銃声と共に幻十郎は吹っ飛んでフレームアウト。三九六、短筒をしまって大笑い。
三九六
「強い強ぉい! 俺様、最ッ強ゥ!」
手下達「三九六様、最強です!」
 画面外から幻十郎の声。
幻十郎の声「下衆が!!」
三九六の声「……あら?」
 颯爽と幻十郎が現れ、一気に三九六の元へ滑り込むと、下から刀を跳ね上げる。三九六、吹っ飛ばされてフレームアウト。
手下達「三九六さまー!?」
 三人揃って三九六を追いフレームアウト。
 誰もいなくなってから膝をつき、倒れ込む幻十郎。画面が上へとスクロールして暗転。
幻十郎の声「下衆が!!」
三九六の声「……あら?」
手下の声「三九六さまー!?」
 駿府、富士見の間の天井から画面が下へスクロールすると、倒れている幻十郎と、富士山を眺めている覇王丸がいる。
 覇王丸、倒れたままの幻十郎へ向く。

覇王丸
「幻十郎、気がついたか?」
幻十郎「……貴様!」
 幻十郎、跳ね起きるながら刀を振るう。覇王丸、少し飛び退いて避ける。
覇王丸
「それだけ元気なら心配いらねぇな。あんまり無茶すんなよ。」
 覇王丸跳び去ってフレームアウト。残された幻十郎は肩を震わせて怒る。
幻十郎
「貴様ごときが俺に情けをかけるなど十年早いわッ!! …………。許さん。必ず……殺ス!」
 画面が上へスクロールして、暗転。
 幻十郎ED 了
 画面が切り替わり、森の中に三九六が倒れており、その側に手下の三人がいる。
三九六
(我旺を裏切ったからにゃ夢路に狙われるし…… 徳川にゃもう取り入ることもできねぇし…… 幻十郎の奴も怒らせちまったし…… 俺様は一体どうすりゃいいんだ!?)
手下達「三九六さまぁ……。」
 三九六、立ち上がると木槌の上に足を置き、力を誇示する(ボイス:「お〜れ様はど〜こまで強くなるんだぁッ!」)。
三九六
「おっといけねぇ! 世界全土を領地とする俺様が島国ひとつで慌てるとはな! おっしゃ、てめぇら! もっと居心地の良い別の領地に連れてってやるぁ! ついてこーい!!」
 三九六、走り去る。
手下達
「三九六様! どこまでもついていきます!」
 手下達も三九六を追って跳び去る。
 三九六ED 了

補足と考察

 キャラの基本モーションが同じな二人。普通に戦っただけではコピペキャラだったとは気づかないのは、性格と戦い方があまりにも違うから&改変箇所が特徴的だったからでしょう。
 三九六のストーリーはPS2版で初めて追加されたので、アーケードしかプレイしていない方は初見でしょう。追加されただけあって、他のキャラに比べて長い上、各種デモのセリフが全て専用となっているので、その差異にも気をつけてみて下さい。

 この二人に関しては「考察」する事はほとんどなく、作中で全て語られてしまっている感があります。
 僅かながら残っている考察の余地と補足を含めて書きましょう。
 まず、基本設定からなんですが、幻十郎が「人斬りを生業としている」とありますが、真サム設定では「牙神幻十郎は殺し屋を職業としていたわけではないが、気が向いたときだけ、巨額の報酬の代償として、殺しを請け負っていた」となっていますので、生業とまで言うのはどうなんだろう。まあ定職は持っておらず、人を斬る以外の収入は、博打くらいしか……強いて言うなら貢がせるという選択肢が増える程度なので、生業と言ってしまってもセーフでしょうか(他作品でも人斬りが生業と説明される事が多いし)。彼は男女両方に対して床を共に出来る性癖なので、貢がせるというのも充分にある話です(特技が男女問わずの千人切りですし)。
 ではEDの話題に入ります。
 三九六がとても不可解な言葉を投げかけています。幻十郎の親父を知っている、と。母も知っていると言っています。
 幻十郎は、母はともかく父を知りません。母親から殿様だと聞かされる事もあれば、罪人だと聞かされる事もあり、当の幻十郎は父親の事を知りたいとは思っていません。母に至っては、完全に「触れてはいけない」事柄でしょう。
 ところで、三九六は本当に両親を知っていたのでしょうか? 難しいのですが、少なくとも母親は知っていたのでしょう。「あのあばず……」と口を滑らせているくらいです。知らないのでしたら、あばずれという言葉は使わないでしょう。
 幻十郎の母は、男達に体を売って生計を立てていたようです。そのうちに情夫が家に居着き、幻十郎を虐待します。ある日、母がその男と情を交わしている場面に出くわした幻十郎は、母が恍惚としながら戯れに助けを求めたのが決定打となり、情夫の大刀で情夫の片腕を斬り落とします。母の悲鳴で冷静になった幻十郎は、大刀を捨てて二度と戻らない覚悟で家を飛び出しますが、その背中を狂った母に斬りつけられます。幻十郎は、母と情夫を斬り殺しました。設定に「好みのタイプ:ガードの固い人」とあるのは、この母の影響が大きいのでしょう。その癖に真サム時の趣味が遊郭巡りなのは……。
 ともあれ、そんな彼に母を知っていると言っても逆効果でしょう。現に幻十郎も無視して斬ろうとしました。そこをお二四らがかばうわけですが、この時幻十郎は不思議な事をします。
 背を向けたのです。一度母に斬られて、今も大きな傷が残る背中を。しかも女と油断ならない三九六がいるのに。
 零のスタッフは真の時の幻十郎ストーリーを知らなかったのではないか、と言う人もいます。その可能性は充分にあるのですが、あえてここでは知っているという前提で書き進めます(知らなかったという前提ならココで終わっちゃうので)。
 まあ、何のことはない、幻十郎自身が言っている通り「殺す価値も無い奴よ……失せろ!」というままじゃないかと。幻十郎は良く斬った後で「殺す価値も無い!」と言い捨てますが、今回は殺す前に本当に殺す価値も無いと思ってしまった、そういう事ではないでしょうか。流石に、「身を挺して三九六を守った二四に免じて」というのはあり得ないでしょう。そこをバッサリ行くのが幻十郎ですから――と書きながらも、実は可能性あるなぁと考えてるんですけどね。
 幻十郎は、作中で持つ印象と設定で持つ印象がかなり違うキャラなのです。設定だけ見ると、先述の生い立ちの他にも、遊郭巡りが趣味だったり、男女問わず床を共にしてみたり、ガードの固い人が好きだったり、後の作品ではユガの傀儡となっていた色に惚れたり、しまいには覇王丸との立ち会いの最中に背後から刺してきた少年を殺さずに張り倒すだけで見逃したりと、結構人間臭い所が随所で見受けられます。つまりは、心に深い傷を持ったまま成長したせいで、ああいった性格になったが、心が凍っている訳ではない、という事。
 そう考えると、二四と三九六に対して背を向けたのは、「本当に腹が立って見てると斬りそうだったから」or「二四の行動に思うところがあった」という二つが有力説かなと思います。
 そこをあっさり討つのが三九六ならば、憤激の一刀を浴びせてから倒れるのも幻十郎だなぁと、なんとも「らしさ」が出る場面です。
 その後、阿呆の三九六さんは突っ走るようですが、幻十郎は覇王丸に助けられてまた怒ります。最終的に覇王丸はこの時のように幻十郎の最期を看取る事になりますが、それは4年以上も後のこと。
 今作では覇王丸との関係の設定はなさそうですので憶測になりますが、この時点での幻十郎にとって覇王丸は、かつて負けた癖に師匠の助けで生き残った弟弟子という扱いだったのかも知れません。そうでなくとも彼は、誰かに助けられたら憤慨しそうですがね。

 なお、幻十郎&三九六に直接関係しないように見えますが、幻十郎EDの覇王丸に助けられたという点と、三九六EDの慶寅との会話は、「慶寅、覇王丸、十兵衛、半蔵」らのエンディングと関係しています。詳しくは、彼らのED考察で。

 ちなみに三九六は、彼が名前を騙った鬼、「壬無月斬紅郎」が久々に登場したサム零スペシャルでは何故か姿を消していました。ちゃっかりしてます。

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