サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察14
忍び寄るハゲ編

2007年11月1日執筆:第一稿

花諷院骸羅
公式を見てない人用の簡易紹介
 2m15cmという巨躯と、玉一つが人の頭ほどの大きさがある巨大な数珠を駆使して戦う、15歳の坊さん。
サム零の物語が終幕以後に16歳の誕生日を迎えるので、作中ではまだ15歳。これまでの作品では身長が7尺4寸(224cm)という巨体だったが、二年前が舞台となる零では成長途上ということで7尺1寸(215cm)に変更されている。
祖父は覇王丸と幻十郎の師である花諷院和狆だが、祖父と違って乱暴者で悟りには程遠い。
オープニング
山城 無宿村
 無宿村の空から画面が下にスクロールすると、子供が泣いている。
子供
「こわいよー! うわーん! 食べられるー!」
 画面外から怒鳴り声。
「このバチあたりめがぁッ!!」
 画面が右へスクロールすると、骸羅が怒鳴っている。
骸羅「………………。」
 我に返る。
骸羅
「はっ! いかん。またやってしまった。俺は子供相手に何を怒って…… ジジイとケンカしてイラだっていたとしても、だ。平常心……そうだ、平常心…… 子供に限ったことではない。村に行っては老若男女に怖がられて……。………………村人全て?」
 骸羅崩れ落ちるorz
骸羅「仏門に下って早数年。まともに坊主やってるつもりは確かにないが……。何だって俺は……。寺には帰れんし。知らぬ地へ旅に出て、己を見つめ直すか。
 
骸羅立ち上がる。
骸羅「これも修行。人に好かれる徳を多少なり身につける。立派な修行だ!」
 
骸羅走り去ってフレームアウト。
1〜4人目勝利後
1人目:よし、北だ! 北に行くぜ!
2人目:よし、東だ! 東に行くぜ!
3人目:よし、南だ! 南に行くぜ!
4人目:よし、西だ! 西に行くぜ!
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、花諷院骸羅さん。うわさは聞き及んでおりますよ。しかし、あなたが日輪の地を目指す理由、察するに我々には凶事となりかねません。されど、剛の者であることに違いはありません、我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」
骸羅「ひ弱そうな奴め! 何か深い悩みとか迷いとかありそうだな! 他の坊主ならともかく、俺は即身成仏しか救世の法は心得とらん!」
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
骸羅「本物の鬼なら即刻祓ってやらねばならんが、自称の鬼か! 葬式代ぐらいは持ってるか!? 成仏から葬式まで引き受けてやるぞ!」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:あぁ! またやっちまった! なぐり合いの旅じゃねぇぞ!
6人目:よし、夕日だ! 夕日に向かって行くぜ!
7人目:よし、朝日だ! 朝日に向かって行くぜ!
8人目:よし、月だ! 月に向かって行くぜ!
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。花諷院骸羅さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
骸羅「かーッ! お前ら、どうにも黒いモンに憑かれてやがる! ついでだ! お前もその我旺とかも祓ってやる! 歯ァ食いしばれ! 歯向かわなけりゃそれなりに楽に成仏させてやる!」
夢路「残念です。我旺様が拓く次の時代を供に担えるものと信じておりました 相容れぬならばここで果てるが道理。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
骸羅「またやっちまった!! クソッ! あーッ、クソッ! 無性に腹立ってきやがった!」
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
骸羅「手前ぇか! この馬鹿殿様! 俺は今虫の居所が悪いんだ! そこに直れ! たっぷり説教してやるからよ!」
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
骸羅「かーッ! 黒え黒え、真っ黒え! 生半可なことじゃ成仏しやがらねえなこりゃあ! この数珠で、思いっきりブンなぐってやるからポックリ往生しやがれ!」
死合開始〜決着
エンディング
 黄泉ヶ原の空から、画面が下にスクロールすると、骸羅が地団駄を踏んでいる。
骸羅「俺は何やってんだ!? なんだかんだで暴れまわっただけじゃねぇか! 何のための旅してやがる! この俺は!! ああッ、畜生! 畜生!!」
 背後から怒声。
「何を言うか、罰当たりめが!」
 
骸羅、振り向く。
骸羅「!? その声、ジジイか!
 
画面が若干左にスクロールすると、花諷院和狆がやってくる。
和狆「出番があるだけ幸せと思え! 馬鹿者が!」
 和狆の後ろから不知火幻庵が飛んでくる。
幻庵「そうだケ! 何でお前は出番があるんだケ! 不公平だケ!」
 画面が左にスクロールすると、和狆と幻庵の後ろに、ナインハルト・ズィーガー、王虎(青竜刀装備)、アースクェイクが立っている。
王虎「んどらぁ! その髪か! その髪がおどれを引き止めとるんか!」
アースクェイク「GFFFF〜! 髪切っちまえば、仲間だぜ〜。GFッ! GFGFッ!」
幻庵「ワシみたいにちょっぴり残すとオシャレだケ!」
ズィーガー「意を決してみたまえ。髪などむしろ無用であることに気付く!」
和狆「骸羅! それこそが悟りの境地じゃ! 髪を捨てよ、未熟者!」
王虎「この勇ましい弁髪が今一番の流行だ、んどらぁ!」
 骸羅、数珠で身を守るようにして、
骸羅
「や、やかましいわ! 俺は、お前らとは違う! 一緒にするな! さっさと往生しやがれ!」
 和狆、編み笠を脱いで身をかがめる。
和狆
「今じゃ!」
 
号令と共に和狆、幻庵、ズィーガーが骸羅に飛びかかる。画面が上へスクロールし、空を映してフラッシュ。
 空からまた下に画面がスクロールすると、アースクェイク、王虎、頭を剃られた骸羅、編み笠を取った和狆、幻庵が立っている。
骸羅「あ、あ……あ……。」
 骸羅崩れ落ちる_| ̄|○
ズィーガー
「これで骸羅殿も我々の盟友となった!」
幻庵「仲間だケ!」
王虎「これでおまえも真の漢どらぁ!」
アースクェイク「仲間〜。GFッ!」
和狆「めでたしめでたしじゃ!」
 
崩れ落ちたままの骸羅を囲んで、一同満面の笑み。
 画面は和やかに上へとスクロール、空を映す。
「わはっはっはっは………………」
 骸羅ED 了
補足と考察
 従来のサムスピとは似て非なる骸羅になってしまっている。
 15歳という年齢を考えると、まだ未熟だった頃という解釈も可能だが、即身成仏しか救世の法を知らない=皆殺しという事実はいかんともしがたい。
 斬紅郎無双剣や天草降臨では、しっかりと斬紅郎を弔って鬼塚を作っていることなどから、その辺りの骸羅が好きだった人には残念な骸羅像であろう。

 導入から途中までの人に怖がられることに悩み、修行嫌いなのに人に好かれる徳を積むとして旅に出るあたりは面白い。
 怒りを溜め込んだ時には鬼の形相になるというが、2mの巨漢が鬼の形相を浮かべていると確かに怖い。
 元々骸羅は乱暴者だったから和狆の寺に預けられたという経緯がある。やはり骸羅も人の子、まだ15歳の少年である。数年前に仏門にくだったというから、まだ十歳やそこらで親元を離れ、村に下りては村中から怖がられるというのはこたえるだろう。
 旅に出る動機としても納得はできるし、骸羅の内面を掘り下げる良い導入だったと思える。
 ……のだが、即身成仏しか知らんといっては皆殺し、とどめまではささずとも瀕死、これは「悩める乱暴者」ではない。下手をすれば快楽殺人者だ。折角の導入が台無しになってしまった。
 それでもばったばったと薙ぎ倒して我旺まで倒してしまい、どう幕を下ろすのかと思えば、ハゲキャラ勢揃いという超展開。

 私個人の意見では、このエンディング自体は嫌いではない。
 まさか和狆どころかズィーガーや王虎、アースクェイクに幻庵まで出てくるとは思ってもみなかった事で、しっかり骸羅の剃髪後のドット絵まで用意されていて、初見は大いに笑わせて貰った。
 が、物語の導入、進行中、エンディングの整合性がまったくないのはいただけない。
 サム零では人々に怖がられる事をコンプレックスとしていた骸羅が、2年後を舞台とする天草降臨ではコンプレックスなど無いと断言できるまでに何があったのかという事は、骸羅の内面を掘り下げ、設定を構築し、より「花諷院骸羅」というキャラクターを良いキャラクターに成長させるとても良い切っ掛けだった。いくらでもまともで面白い話が作れただろうに、作中の描き方を間違え、さらにエンディングでは収拾を付けようともせずにネタに走るというのはちょっと……。
 最初からネタに走ってくれれば「おもしろかった!」で済んだだけに残念。

 なお、髪を剃られた骸羅はこの後、「サムライスピリッツ天下一剣客伝」にて剃髪した姿で参戦する。
 髪を剃られた怒りからか、超絶なバグ連続技を搭載しゲーセンで猛威を振るった。家庭版では修正されたが髪は剃られたままで、逆に髪のある骸羅のドット絵を流用する形でキム・ウンチェ(韓国版斬紅郎無双剣での骸羅の名前)という追加キャラが登場し、坊主キャラからの脱却に失敗してしまうのであった。

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