サムライスピリッツ零
ストーリー&エンディング考察5
粋と忠臣編

2005年6月28日執筆:第一稿、6月28日加筆修正:第二稿

徳川慶寅 覇王丸 柳生十兵衛 服部半蔵
公式を見てない人用の簡易紹介
 黄色の着流しに、茶色い長髪の髷という奇抜な格好だが、将軍家の跡取り。粋を愛する遊び人。自分と六人の恋人の名前がついた七本の刀を使う新主人公。新キャラ。
公式を見てない人用の簡易紹介
  豪放で豪快な豪傑だが、頭も回る。胴太貫の名刀・河豚毒を使う剣士で、故郷の許嫁を置いて強い相手を探し旅を続けている。無類の酒好き。元祖主人公。
公式を見てない人用の簡易紹介
 公儀隠密として動く隻眼の双刀使い。かつて覇王丸を破った事がある。今回は半蔵とは別行動だが同様の任務についている。
公式を見てない人用の簡易紹介
 言わずと知れた伊賀忍軍の頭。我旺に叛意の疑いありという事で、真相究明の調査に出る。旧作との違い:妻も息子も健在で、任務のみに集中。悪ふざけをする余裕も。
オープニング
赤穂 恋ヶ浜
オープニング
吉野 千本桜(夜)
オープニング
土佐 第三十三番札所(夕方)
オープニング
土佐 第三十三番札所(夕方)
 恋ヶ浜の空から画面が下にスクロールすると、慶寅と侍が立っている。
「おぬし、かなりの剛の者とみた……。」
慶寅「アンタよりは強ぇだろうよ。それよりアンタ、主は誰だ? 賊のたぐいとは思えねぇが?」
「我が主は、日本全土より、真のますらおを求めておる。おぬしの如きますらおが我が主に仕えるなれば、各地を奔走せし拙者も本懐。この身を賭してお願いいたす。御身が望まれるなれば……此処で散るとも悔い無し。」
慶寅「俺は誰かに仕えるつもりなんざまるでねぇが、会うぐらいならまぁ、いいかもな。」
「かたじけない。拙者はまだまだますらおを求め各地を回る故に案内できぬのが心残りだが……日輪國に向かわれよ。おぬしほどのますらおであればおのずと我旺様に見えられよう」
 画面が上へスクロールして暗転し、再び恋ヶ浜の空から画面が下にスクロールすると、慶寅一人が立っている。慶寅、腰に手を当てる。
慶寅
「……兇國日輪守我旺に反意の疑い有り、か。」
 画面が上へスクロールして暗転。

 モノトーンになった恋ヶ浜から画面が左へ移動すると、若き日の我旺の横で慶寅が肩を押さえて跪いている。

慶寅
「……チッ。汗が目に入って足がすべっちまったな。さて、続きといこうか。」
 慶寅立ち上がる。
我旺
「よい覇気だ。これまでにせい。慶寅よ、その有り余る覇気、國の為に用立てる日が来よう。うぬほどのますらおが國を統べるのであれば、この國も変わろう。」
慶寅「俺は将軍になんざ……ならねぇよ。」
我旺「……いつの日か、うぬの耳にも聴こえようぞ。國の哭く声が……。」
慶寅「いいから、続けようぜ? アンタと向き合ってると、ゾクゾクしてきやがる……!」
我旺「ワシが死力を尽くし、槍を振るうは國の為にこの命を賭す時のみ。うぬが國の害となるなれば、その時は――」
 画面が上にスクロールして暗転。

 カラーに戻った恋ヶ浜の空から画面が下にスクロールすると、慶寅が立っている。

慶寅
「反意……。アイツがなァ……。十兵衛と半蔵の報告を待つ気にもなれんしなァ……。
 慶寅、少し歩く。
慶寅「知らん仲でもねぇし……俺が引導渡してやるのも粋ってモンじゃねぇか。」
 慶寅、歩いてフレームアウト。
 竹林の中に半蔵が腕組みをしてたたずんでいる。
半蔵「……!」
 煙と共に半蔵が消える。
 竹林の中を十兵衛が走っている。画面はそれに合わせて右へスクロール。  画面左より十兵衛が走って来る。
 十兵衛が立ち止まると、背後に半蔵が出現する。十兵衛は振り返りながら斬りつけるが、半蔵はかき消え、一瞬後に一歩離れた場所に現れる。
 相手を確認した十兵衛、刀を鞘に納める。半蔵腕を組んで少し笑い、すぐ止める。
十兵衛「半蔵……。お主、人が悪い。柳生の間合いにみだりに踏み込むものではない。」
半蔵「十兵衛殿、此度の任……申されよ。」
十兵衛「うむ、そうであったな。日輪國領主、兇國日輪守我旺が謀叛を企んでおるとのこと。真偽を確かめ、その如何によっては――」
半蔵「……滅。十兵衛殿は表より、拙者は裏より……委細承知。」
 画面が僅かに左へ素早く移動する。
 半蔵、半身だけ振り返って右手を挙げると、背後に三人の忍者が跪いた状態で現れる。
忍者「半蔵殿。」
半蔵「我旺と通ずる奸賊がいるやもしれぬ、裏を洗え。――散ッ!」
忍者「――承知ッ。」
 忍者達が消えると、画面が元の位置へゆっくりと戻る。半蔵、十兵衛に向き直る。
十兵衛「日輪より出でる邪気、災いの元となろう。」
半蔵「十兵衛殿、油断召されるな。――御免!」
 半蔵、しゃがみ込んで姿を消す。
 十兵衛、画面に背を向け、竹林の向こうに見える夕日を眺める。
十兵衛「うむ。では不貞の輩、江戸に飛び火する前に狩り取ってくれるわ。
 十兵衛、走り去る。

 誤字。正確には不貞→不逞。狩り取るも正確には刈り取るだか、こちらは演出と考えられる。
 画面が下に素早くスクロールすると、夜桜の下に腰を抜かした男と刀を振りかぶる覇王丸がいる。
覇王丸
「うおぅりゃあ!!」
「ま、待ってくれ! 俺の負けだ!」
 覇王丸、振り下ろした刀を寸前で止める。
覇王丸
「俺の勝ち、だな。行きな。次からはもう少し相手を選べよ。身のためだぜ。」
 男は立ち上がると一目散に逃げ出し、フレームアウト。画面が右にスクロールすると、刀を構えた覇王丸の後ろに、寝転がった慶寅がいる。
慶寅
「おいおい……せっかく風流と決め込んでるんだぜ。無粋な真似すんじゃねぇよ。」
 慶寅、立ち上がり、覇王丸も振り向く。
覇王丸
「そいつぁ悪かったな。売られたケンカを買っちまって……すまねぇ。」
慶寅「物騒なヤツだな、アンタ。」
覇王丸「こいつが俺の生きる道、生き様ってね。」
 覇王丸、刀を構えながらにじり寄る。
覇王丸
「それより、そいつらは飾りじゃねぇだろ? よかったら、一勝負どうだい?」
慶寅「へッ……俺は強ぇぞ。ってトコだが、悪ぃな。」
 慶寅、覇王丸に向かって歩き出すと、その横を通り過ぎてから振り向く。
慶寅
「今はそんなつもりはねぇ。こんなナリだけどよ、急いでるんでな。」
 覇王丸も振り向く。
覇王丸
「そりゃあ残念だな。しかしまぁ、次に会ったときは断らせないぜ。」
 一拍置いて。
慶寅「なァ、アンタ、どこへ行くんだい?」
 覇王丸、慶寅に背を向ける。
覇王丸
「日輪國に、方々から強ぇ奴らが集まってるって聞いてよ。腕試しにでもなりゃあってな。」
慶寅「へぇ、日輪國……ねぇ。」
覇王丸「俺は先に行くが、よかったら後から来いよ。きっと、面白ぇからよ。」
慶寅「……。」
覇王丸「約束したぜ。次にお前さんと会うのが楽しみだ。じゃあな!」
 覇王丸、走り去る。慶寅を残して画面が上にスクロール。夜桜の間に満月が映る。
1〜4人目勝利後
1人目:我旺の謀叛……。単なる間違いってンならそれでいいんだがなァ。
2人目:日輪まではまだまだ遠いな。急ぐか。
3人目:大飢饉……全く治ってねぇな……
4人目:……江戸を離れりゃ、酷ぇモンだな。
1人目:まずひとり! 調子いいねぇ!
2人目:次はどんな強ぇ奴なんだかな。楽しみだ。
3人目:くぁあぁっ! 勝利の酒ってな旨ぇなぁ!
4人目:今の一撃、我ながら惚れ惚れするねぇ!
1人目:公儀隠密、柳生十兵衛。いざ、日輪に行かん!
2人目:順調順調。茶屋で一服するか。
3人目:謀叛の風聞、虚言であればよいが……
4人目:半蔵はどのあたりにおるのか。あやつに限って心配は無用か。
1人目:これより日輪の地に赴かん。
2人目:謀叛……杞憂であればよいが。
3人目:みだりに民の血は流させぬ……
4人目:十兵衛殿は無事であろうか。
小ボス「萬三九六(よろず・さんくろう)
(場所ランダム)
開始前デモ
 次の対戦相手が吹っ飛んで来て、夢路登場。
夢路「少しは楽しめると思いましたが……失望させてくれますね」
 こちらに気づく。
夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、徳川慶寅さん。うわさは聞き及んでおりますよ。時期将軍ともあろう御仁が、単身で我旺様に挑まれるおつもりですか? その思い上がり、見過ごすわけにもいきませんね。恨みはありませんが……」 夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、覇王丸さん。うわさは聞き及んでおりますよ。あなたほどの剛の者なれば日輪の地を目指すも道理でしょう。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」 夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、柳生十兵衛さん。うわさは聞き及んでおりますよ。しかし、あなたが日輪の地を目指す理由、察するに我々には凶事となりかねません。されど、剛の者であることに違いはありません。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」 夢路「おや……こんなところで出会えるとは光栄です、服部半蔵さん。うわさは聞き及んでおりますよ。しかし、あなたが日輪の地を目指す理由、察するに我々には凶事となりかねません。されど、剛の者であることに違いはありません。我旺様に仕えるに値するか、試させていただきましょう。」
慶寅「まァ、恨みつらみはともかく そういうことなら楽しまなくっちゃなァ! 派手にいこうぜ!」 覇王丸「いいねぇ! その殺気……あんた、相当な使い手だな!」 十兵衛「その構え、神夢想一刀流……なかなかの使い手と見た。面白い! 新陰流にどこまで通じるか、楽しみじゃ! 存分にかかってくるがいい!」 半蔵「二君には仕えぬ……。お主の腕では、影斬る事かなわじ。」
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。如何に小さな禍根であろうとも断て。それが我旺様の命です。三九六さん。くれぐれも、お願いしますよ。」
 夢路跳び去る。
 ステージに画面が切り替わって三九六の濃い顔がバストアップで登場。
三九六「ちょっと待てぇ! 次は俺様の番だぜ! が〜はっはっはっは! 鬼と恐れられたこの俺様に勝てるかなぁ? んん〜?」
 夢路の前に三九六が現れ、木槌の上に足を載せて力を誇示する。
夢路「いいでしょう。お任せします。次に会うときは我旺様に与する同志であると期待しておりますよ。」
 夢路跳び去る。
慶寅「……アンタじゃどうにも満足できそうにねェな。野暮なことは言いたくねェけどさっきのヤツと変わらんと、アンタ……怪我するぜ?」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
覇王丸「……やれやれ。お前、どうにもさっきのヤツより弱そうだな。」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
十兵衛「斯様に巨大な木槌の使い手とは! 面白い! 新陰流にどこまで通じるか、楽しみじゃ! 存分にかかってくるがいい!」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
半蔵「拙者を前にしておのれの命脈尽きたるを気づかぬとみえる。……哀れなり。」
三九六「なんだと、てめぇ! ぶっ殺してやる!」
5人目(萬三九六)〜8人目勝利後
5人目:我旺……どうやら本気のようだな。
6人目:日輪に人が集まってやがる。本気で戦をやる気か? 
7人目:どこに行っても飢饉の被害ってな酷ぇな……。
8人目:戦が始まったか。……やれやれ。ろくなもんじゃねぇなァ
5人目:我旺……? 日輪の領主だったか。キナ臭えな……。
6人目:いい勝負だった! これだからやめられねぇ!
7人目:なかなか手強かったな。俺もまだまだ甘い……か。
8人目:きわどい一戦だったな。素直に酔えねぇや。
5人目:謀反の企み、信憑性が増したのぅ。
6人目:うむ。これまでの報告はしておくべきじゃな。
7人目:日輪に兵が集っておる。予断は許せぬな。
8人目:幕府軍が動き始めたか……。ワシも日輪に急がねば。
5人目:謀叛企てしは真であったか。……滅せねばなるまい。
6人目:人が流れておる。急がねば日輪が血に染まる……。
7人目:忍の道たるは、無常にして無情……。
8人目:逝くも宿命、逝かぬも宿命。覚悟を決めよ。
中ボス「黒河内夢路(くろこうち・ゆめじ)
黄泉ヶ原
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。徳川慶寅さん。しかし……ここまでです。國賊徳川の嫡男に生を受けたことを恨まれますよう、申し上げます。」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。覇王丸さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。柳生十兵衛さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
 戦闘ステージをバックに、夢路バストアップで登場。
夢路「やはり、あなたでしたか。服部半蔵さん。今一度、問います。我旺様に仕える心積もりはありませんか?」
慶寅「なぁに、気にすんな。たまたま國賊徳川に生まれただけで俺は俺。恨むとすりゃあ……そうだな、今からアンタを斬らなきゃならん、この宿命は惨いモンだな。」 覇王丸「悪いが、俺は剣に生き、剣に死す。放蕩無頼ってぇのが俺の生き様でね。誰かに命をあずけるような窮屈なことはどうにもあわねぇ。」 十兵衛「剣術指南を授かり公儀隠密の任に与るこのワシを懐柔しようなど、土台無理なこと。残された刻、多くはあるまい。剣こそが言葉。かかってくるがいい!」 半蔵「二度は申さぬ。お主らの背後の歪みし気配……あやかしと通じたか? ……お主、死相に憑かれておるな。滅するも、また情け。」
夢路「世迷言を……ッ! 我旺様が拓く新たな時代に國賊徳川の血など無用。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」 夢路「残念です。我旺様が拓く次の時代を供に担えるものと信じておりました 相容れぬならばここで果てるが道理。返り血で服が濡れるのは好ましくありませんが……黒河内夢路、参る!」
中ボス勝利後
慶寅「我旺、あの日の決着……意外と早くつきそうだな。」 覇王丸「なんだか、とんでもねぇことになっちまってるな。」 十兵衛「この戦、長引かせてはならぬ。我旺の首を獲る他あるまい。」 半蔵「兇國日輪守我旺……冥府魔道に堕ちるべし……。」
最終ボス「兇國日輪守我旺(きょうごく・ひのわのかみ・がおう)
戦場(正式名称不明)
開始前デモ
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「慶寅か。あのときの小童が気骨のある、よい面構えになった。」
 戦闘ステージをバックに、我旺バストアップで登場。会話セリフとは別に我旺の固定ボイスが流れます
ボイス(我旺)「我が道の後ろには、死屍累々……。鬼となりてゆくは覇道……夢幻の果て!」
我旺「夢路を倒せしますらおはうぬか。よい覇気をしておるわ!」
慶寅「我旺……あの日の続き、今こそ果たさなけりゃなァって思ってな。國賊徳川が慶寅 アンタの首、直に貰い受けよう。」 覇王丸「お前が我旺か。これだけの強ぇヤツを集めてどうしようってんだ。」 十兵衛「我旺、お主の度し難い狂行、その首ひとつでは償いきれぬ! 情けじゃ。せめて新陰流奥義で葬ってくれるわ!」 半蔵「兇國日輪守我旺、徳川に修羅を燃やし何とする。その心身、すでに鬼と化したか……。」
我旺「我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。我が覇道の怨敵であるうぬが後に将軍となるか。この我旺こそが将軍となりて、國を立て直すか。」
慶寅「『うぬが國の害となるなれば、その時は――』 ――どうするんだい? アンタのセリフだぜ。」
我旺「知れたことを! 次代将軍徳川慶寅よ! 死して時代の礎となれぃ!」
 作中では通常のカギ括弧
我旺「國賊に与する下衆め! ならば聞けい! 我が志は、國賊徳川を打ち滅ぼし、真のますらおによる國を築くこと。ならば! うぬの如きますらおは得難き宝であるとは言え我が覇道の仇と成るなれば斬って捨てるもやむを得まい。ゆくぞ、ますらおよ! 死して時代の礎となれぃ!」
一本勝利後
戦場→地獄絵図(正式名称不明)
闇キ皇(くらきすめらぎ)への変身デモ
我旺「ふははははっ! 震えが止まらぬわ! うぬの如きますらおと相対する喜び、久しく忘れておったわ! だが、我が覇道、もはや曲がることも許されぬ。されど止まる事も許されぬ。ワシの心震わせしますらおよ! 礼を言おうぞ。最期に人の心を思い出したわ。そして……人を捨てる決意も固まったわ! 闇キ皇よ! 我が魂、存分に食らえぃ!」
 我旺、鎧武者姿に変化する。背景の戦場が一瞬で壊滅する。空には黒雲が渦を巻き、戦場は緑と青の炎が燃えさかる地獄絵図に。
慶寅「堕ちたな……我旺。己で國を立て直そうというその気位、嫌いじゃなかったぜ。……あばよ。」 覇王丸「ったく、つまんねぇモンに手ぇ出しやがって! 反吐が出るぜ、バカ殿様! ぶった斬ってやる!」 十兵衛「馬鹿者が! 狂気に取り憑かれおって! 精神修行が足りぬわ! 新陰流を学んでおれば、このような過ちもなかったであろう! 次の世においても人に生まれ変われたならば即刻、新陰流の門を叩けぃ!」 半蔵「愚かなり! 人を捨て、魂を捨て、果てに何を望むか。兇國日輪守我旺……誅殺せし者、我が服部半蔵の名を抱いて――黄泉路を逝けぃ!」
死合開始〜決着
エンディング
 地獄絵図の空から画面が下にスクロールすると、慶寅と倒れた我旺がいる。
 我旺、身を起こして膝を突く。

我旺
「見事……! 慶寅よ……。あの小童が、ワシを討つまでに成ったとは!」
慶寅「へッ……俺は天才だからな。いつか……アンタと対等に戦えるのを待ち望んでたぜ。」
我旺「うぬに敗れしことを誇りに思う。我が首級を持って江戸に戻れ。戦場で果ててこそ武人の本懐。」
 慶寅、我旺に突進して殴りつける。
慶寅(ボイス付き)「目を覚ましやがれッ!」
 我旺吹っ飛ぶも倒れずに堪える。
我旺「何故、殺さぬ……!?」
 我旺膝を突く。
慶寅
「我旺よ。幕府の歪みは然り。だが、戦に発展するようなやり方しか無かったのか?」
我旺「この飢饉の惨事を前にして……悠長な改革は望めまい。一刻を争う状況であろう。」
 一拍置いて。
我旺
「國を支える民草なくしては、國力なぞ無いも同然。今、この刻にも、諸外国が、とりわけ欧羅巴諸国が我らが國を領土にせんと……!」
慶寅「國の外のことなんざ、確かに真剣に考えたことはねぇな。幕府内にも何人がそれを真剣に考えているか……」
我旺「うぬのごときますらおが次代将軍を担うのであればワシも心残りはない……。」
 一拍置いて。
我旺
「徳川慶寅よ。この國を……頼む……!」
慶寅「アンタ、俺の知ってる我旺だよ。身震いするほど強くてよ……本気で國を愛してて……粋なアンタに、惚れてたぜ。」
 慶寅、一瞬構えてから後ろを向く。
慶寅「アンタの頼み、断るほど野暮じゃねぇよ」
 慶寅飛び去る。我旺を残したまま、画面は上へスクロールして暗転。
 画面が上にスクロールして、戦場の空へ切り替わる(地獄絵図版ではなく、通常の戦場)。画面が下へ移動すると、十兵衛が画面に背を向けて立っている。
 半蔵が突然現れると、十兵衛は振り返って半蔵と向き合う。
半蔵「十兵衛殿。謀反人の最期、確かに見届け申した。」
十兵衛「うむ。……公儀の任、これにて終了。」
 画面が素早く左に少しだけ移動し、半蔵の背後に跪いた忍者が現れ、十兵衛は画面に背を向ける。
忍者「半蔵殿。」
 半蔵振り向く。
半蔵「何とした?」
忍者「将軍が逝去された次第、報告いたします。」
 画面が素早く右に少し移動し、十兵衛が忍者の方を見る。
十兵衛「なんと!?」
 画面が素早く左に少し移動。十兵衛は忍者の方に向き直る。
忍者
「半蔵殿の読み通り、幕府内に奸賊がおりました。老中 田沼意次、兇國日輪守我旺と懇意にあった様子。十兵衛殿、慶寅様が日輪の地におわします故、よしなに――との言伝賜っております。」
 画面が素早く右に少し移動し、半蔵が忍者から十兵衛へ向き直る。
半蔵
「十兵衛殿。拙者、これより奸賊田沼意次、誅殺し申す。」
十兵衛「では、ワシは慶寅様を江戸にお連れいたすとしよう。」
半蔵「――御免!」
 
忍者が消え、半蔵も屈みこんで消える。
 十兵衛は彼らが居た場所に背を向けて腕を組む。画面がゆっくり右へスクロールすると、慶寅が立っている。
慶寅
「おぅ、十兵衛。アンタも来てたのか。」
十兵衛「いや、それはともかく……お父上がご逝去されました。至急、江戸にお戻りくだされ。」
慶寅「……そうか。すぐに戻ろう。だが、ちょっと待ってくれ。野暮用があってな。」
 画面が素早く左へスクロールして暗転。
 廃寺に煙と共に半蔵出現。
半蔵「奸賊田沼意次……闇に滅せよ!」
 半蔵、走り去る。
 半蔵ED 了
 黄泉ヶ原の空から画面が下にスクロールすると、覇王丸が立っている。僅かに画面が左に移動すると、慶寅がフレームイン。
慶寅
「よう。随分、派手なケンカやったみてぇだな。」
 覇王丸、振り向く。
覇王丸
「ああ。面白かったぜ。」
慶寅「それより、約束だ。抜きな。」
 慶寅、慶寅に手を掛けて抜刀姿勢。
覇王丸
「お、その気になったか。あのときから楽しみにしてたんだ!」
慶寅「まだ言ってなかったな。俺の名は、徳川慶寅。」
覇王丸「……へぇ。俺もツイてるねぇ! まさか、お次の天下人とケンカできるなんてな!」
慶寅「やる気なんざなかった将軍役だがな、気が変わった。だから、最後の火遊びだ。」
 覇王丸、刀を構えて一歩にじり寄る。
覇王丸
「よぉーし! 受けて立とうじゃねぇか! 徳川慶寅のケンカ、この覇王丸が買った!」
慶寅「覇王丸、アンタ、この先どうするつもりだ? よかったら、俺と一緒に国造りやってみねぇか? せっかくの国造りだ。地味には終わらせられねぇな。俺流にパッと一花咲かせるぜ?」
覇王丸「俺が幕府に仕えるって? 十兵衛の旦那みてぇな幕府お抱えの剣士ってことか? いいぜ、お前さんが勝ったら、な!」
慶寅「ありがとうよ。……いざ、尋常に。」
覇王丸「勝負!」
 二人同時に斬りかかると同時に画面が高速で上にスクロールしながら白く暗転。
覇王丸「うおぅりゃあ!!」
 黄泉ヶ原の空から画面が下にスクロールすると、覇王丸と慶寅が構えて向き合っている。
 画面がゆっくりと左へ移ると、少し離れた所から十兵衛が二人を見ている。

十兵衛「慶寅様と覇王丸。左様で……。しからばこの十兵衛、野暮用、見届けさせていただきますぞ。剣術指南役として、慶寅様が幼少の頃より剣の道を説いて参りました。よもや、覇王丸に後れをとるような指南はいたしておりませぬ。……されど、慶寅様が逝去されるような事態になれば」
 一拍置いて
十兵衛
「皆……斬らねばなるまい……。このワシが涅槃の御供仕りまする故、慶寅様、ご安心召されよ……。」
 画面が素早く上にスクロールして暗転。
 十兵衛ED 了
 黄泉ヶ原の空から画面が下にスクロールすると、慶寅が立っている。
慶寅
「兵どもが夢の跡……か。」
 画面が上にスクロールして暗転。
 慶寅ED 了
 長崎、出島を見る帆船の帆から画面が下にスクロールすると、甲板に覇王丸が立っている。
覇王丸「強ぇえヤツがいる限り、俺の旅に終わりはねぇ……。この道の逝く先は……武士道か、あるいは、修羅道か……。」
 画面が上にスクロールして暗転。
 覇王丸ED 了

補足と考察

 今回は物語と同じく慶寅を軸に考察をしましょう。
 慶寅は徳川十代将軍・家治の嫡男として生まれてはいるものの、家督は父が養子に向かえた義弟・家斉が継ぐことに決まっています
(公式小説に明記)
 史実では家治の息子は実子の家基と養子の家斉の二人となっており、家基は(サム零の舞台から10年ほど前に)17歳で鷹狩りの帰りに怪死してしまっている。それ以後、家治は政治に無関心となり、老中の田沼意次に全てを任せてしまっていた。
(余談ですが、家治は「暴れん坊将軍」こと徳川吉宗の孫に当たる。つまり慶寅のひい爺さんは暴れん坊将軍だったという事に……)
 サム零では慶寅は怪死した家基の弟で家治の実子だが、家治が家基怪死の二の舞を避けるために政治から遠ざけているという設定になっています。
 そのために、家督は養子である家斉が継ぐことになっているわけです。慶寅自身も将軍となることに興味が無く、放蕩三昧をしていますが、周囲からはまだ13歳の家基ではなく実子である慶寅を将軍にという声も上がっている。
 さて、当の慶寅は孤独です。彼を彼として見てくれる人間に餓えています。6人の恋人は良いとして、彼には同性の友がいません
(サム零&SPの続編、天下一剣客伝でも、コンプレックスの設定が「心腹の友がいないこと」に変わっています)
 幼い頃から十兵衛に剣を教わり、その天賦の才をいかんなく発揮するものの、十兵衛以外に慶寅と手合わせをしてくれる人がいませんでした(いても、将軍の子ということで手加減をされる)。そんな彼が十兵衛以外に初めて出会った、手を抜かずに手合わせをしてくれる人物、それが兇國日輪守我旺だったわけです。時期将軍と言われる慶寅を完膚無きまでに打ち破る我旺、政治に興味がない慶寅に対して國の事を真剣に考える我旺、慶寅が敬意を抱くのは自然な流れだったと言えるでしょう。
 その我旺が逆賊になろうとしている。噂を聞きつけた慶寅は、我旺と直接会って真偽を確かめようと日輪國を目指します。
 彼が行動を始めた頃、十兵衛も将軍家治から直々に調査を命じられます。十兵衛の思うままに伊賀衆を動かして良いとまでの命令です
(公式小説より)
 公式小説に関連してもう少し突っ込むと、家治は聡明な将軍だったとされる一方、老中田沼意次に全てを丸投げしてしまっている面もあります。この時、十兵衛は家治に我旺謀叛の噂について老中(田沼意次)は何と言っているか問います。サム零の田沼意次は我旺と組んでいますので、根も葉もない噂だと答えたようですが、家治は納得できず気になったために、十兵衛に調査を命じるわけです。この事から、将軍家治は田沼の操り人形や愚鈍な人物ではないと解ります(無気力になってしまっている感は否めませんが)。この後の十兵衛とのやり取りから、将軍も孤独で、慶寅の事は気に掛けているけれども、家基の死を引きずっている事が解ります。
 十兵衛は半蔵に任務の内容を伝えると、二人は同じ目的を持ってそれぞれ旅に出るわけです。
 覇王丸は慶寅が旅の途中に偶然出会い、いずれ戦う約束をして別れる剣士というのが今作での位置づけですが、脇役かと思いきや実は重要な役割を持っています。

 旅を続ける中で、慶寅は世の中の惨状をようやく認識します。飢饉に苦しむ市井の人々を見ることで、彼の中で心境の変化が起こっていくわけです。
 そうして我旺との戦いが終わり、彼は我旺に国の未来を託され、それを引き受けます。
 一方、十兵衛と半蔵は謀反人の死を見届け、将軍死去の報を受け、田沼意次が我旺と繋がっていたという事を知ります。半蔵は田沼意次成敗のために急遽江戸へ戻り、十兵衛は父が死んだことを慶寅に教えるために日輪に残るのですが……田沼意次については補足がありますので、後述します。
 慶寅は国のために身を捧げる前の、最後の時間として覇王丸といつかの約束を果たし、手合わせをしようとします。
 その際、慶寅は自分が徳川であることを明かしますが、覇王丸の反応は気持ちの良いくらい"対等な"扱いでした。慶寅が求めても求めても得ることの出来なかった、我旺を斃したことで失ってしまった、十兵衛以外の"対等に戦ってくれる相手"――つまり、慶寅を徳川としてではなく、慶寅個人として認めてくれる相手に、覇王丸はあっさりとなってしまったのです。この後の「ありがとうよ」というセリフの重みが解ったのは、恐らく立ち会っていた十兵衛のみでしょう。
 二人の激突の結果は直接的には描かれていません。十兵衛は覇王丸が勝ち、慶寅を殺してしまった場合は、覇王丸や目撃者を斬り捨てて自害しようと心に決めます。
 公式小説ではこの時の詳細が書かれていますが、覇王丸の「河豚毒」と慶寅の「慶寅」という力と力の戦いは、結局十兵衛に止められてしまいます
(これは三九六のエンディングを見て頂くと解りますが、家庭版とは言えゲーム中でも出ているので完全に公式という扱いで良いでしょう)
 小説内では十兵衛が慶寅、覇王丸の両方を死なせたくないという心情が描かれています。また、手合わせ前に覇王丸は世界修行の旅に出ると言っていました
(小説での覇王丸は幕府方の賞金稼ぎとして、日輪軍の武将や剣客にかけられた懸賞金を得るために戦います。それもこの世界修行へ出るための金を稼ぐためであり、決して気分の良いものでは無かった事も描かれています)
 慶寅はその時初めて、世界というものを視野に入れます。
 我旺と約束した日本の未来、それを守るために何をすればいいのか。
 慶寅は、家治の死で浮き足立っている江戸を落ち着かせると姿を消し、書簡で家督を家斉が継ぐのは父が決めた事なのでそれを曲げるなと告げます
(また、事態の収拾につとめている間に、外国の使節団にいたシャルロットと会い、ヨーロッパが日本を狙っている事を知ります)
 これは一見、我旺に頼まれ「断るほど野暮じゃねぇよ」と答えたのに約束をたがえたように感じます。しかし彼は、覇王丸が見ていた「世界」に目を向けて気づいたのです。日本はいくつもの集落を藩が治め、藩は幕府によって治められている、ならばアジアやヨーロッパは誰によって治められているのか? 世界の国々、世界の地域を治める幕府を作ることが出来れば、それこそが日本を守る事になるのではないか、と。
 慶寅は弟が国内から日本を守り、自分は国外から日本を守ろうと考えたのです。
 そうして彼は世界幕府を興すことを夢見て旅立ったのでした。
 慶寅EDのラストシーン、「兵どもが〜」という箇所は十兵衛との別れという、公式小説のラストシーンでもあります。

 慶寅は覇王丸がすでに海外で修行の旅をしているものと思っており、世界幕府の設立に手を貸して貰いたいというほのかな願望を持っていましたが、当の覇王丸が海外に出れたのかは不明です。
 覇王丸EDのラストシーンでは、長崎の出島を船上から眺めていましたし、公式小説でも海外へ出る路銀が貯まったとありますが、彼が旅立ったとすれば1786年の秋口。1788年の春先には天草四郎時貞が半蔵の息子、真蔵の身体を乗っ取って復活し、春には覇王丸を始めとした剣士達が天草討伐に旅立ち、初夏には天草が討ち取られています。つまり、覇王丸が海外に出ていたとしても、1786年9月〜1788年3月頃までの1年半という事になる。当時は帆船でも平均で時速10km前後のため、大陸に渡って修行して帰還となると1年半では無理ではないかというのが私の見解です。海難事故にでもあって船が沈んでしまったのか、それとも何か事情があってお金を使ってしまったのか……。覇王丸が世界を視野に入れたのは、彼が故郷を離れた時からなので(初代サムスピの時点でオフィシャルストーリーにそういった記述があった)、簡単に諦めたとも思えないが……。

 最後に、半蔵が誅殺しに行った田沼意次について。
 史実の田沼意次は、一昔前までワイロ政治をしたり、将軍徳川家治の暗殺疑惑があったりと、いわゆる悪徳政治家のイメージを持たれていました。
 恐らくサム零の田沼意次もが我旺と通じていたというのも、そのイメージで作られた設定だと思われます。
 しかし、実際には商業主義と言いますか、経済通で、そのシステムを理解していた政治家だったというのが今の田沼意次像です。
 天明の大飢饉に見舞われ、大量の餓死者を出した(東北地方で10万人が餓死)と言われる事は、天災だからある程度仕方がない点と、全国に東北へ米を売り惜しみするなという命令を下したという点から、彼が必ずしも失策をしたというわけではないと解ります。
 ワイロについては、言ってしまえば当時のワイロは常識ですので田沼だけを非難するのは筋違い。これは、後の老中となる松平定信と田沼がライバル関係にあり、田沼を追い落とすために松平方が(正確には反・田沼勢力が)悪いイメージを強調したという可能性が濃厚です。
 将軍家治の暗殺疑惑については、九代将軍家重が田沼を重用し家治にも田沼を重用しろとの遺言を残したなど、家治の庇護があったからこそ田沼意次の立場があったので、彼が将軍を殺す理由はありません。田沼の薦めた医者の薬を飲んで家治が危篤に陥ったという話が残っているため、そのような疑惑を持たれたのでしょうが……この話自体が捏造という可能性は否定できません。なんせ、将軍家治の死は田沼が失脚するまで公表を待ったのですし。
 なお、「白河の清きに魚も住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」という川柳があるように、田沼が失脚した後に台頭した松平定信は贅沢を禁止し、倹約に継ぐ倹約で支持されながらも人心を失いました。清廉潔白は良くても、潔白すぎては住みにくいって事ですね。
 更に、成長した家斉は自堕落な青年になってしまい、締め付ける松平定信を疎んじて解任。家斉は(義兄慶寅以上に)色事を好み、50年にも渡る将軍生活の間に55人も子供生ませるという始末
(彼が自堕落だったからこそ、町人への締め付けが無くなり、化政文化が発達していって写楽や北斎といった浮世絵、歌舞伎などが大衆に広まり進化していったという面もあります)。一概に悪いとは言えませんが、我旺に託された国を義弟に託した形となった慶寅の心情は如何に……。
 話を戻しますと、田沼意次は失脚したために実現までは行きませんでしたが、蝦夷地の開拓とロシアとの貿易も考えていたらしく、先見の明があったのは明らか。
 田沼のロシアとの貿易は、諸外国に対抗するという意味もあったと考えられており、我旺の諸外国と戦う力を付けるためにも国を火急に安定させなければいけないという考え方と、相容れるとも逆とも言える立場です。果たして田沼は我旺と手を組んでいたのでしょうか?
 サム零を取り扱った掲示板などを見ていると、シナリオを考えた人が一昔前の田沼像で書いたのではないかと言われており、私もそうだと考えていたのですが、今回の考察にあたって一つの考えが浮かびました。
 公式小説によると、家治は9月6日に危篤となり8日午前に死亡、9日に日輪に居た半蔵と十兵衛の元へ連絡が届くといった流れになっています。半蔵配下の忍者が知らせを持ってきましたが、これさえも松平定信が田沼意次を失脚させるために流した情報だったという解釈も可能ではないでしょうか?
 実際、家治が死去したのは8月25日ですが死が明らかにされたのは9月8日です。問題は、この解釈だと伊賀忍者が無能で、松平方の思うつぼになってしまい、部下を信用した半蔵も一緒に思うつぼという事に……。
 ……まあ、流石にそれは穿ちすぎだなと自覚してます。恐らくは単純に古い田沼像に従って設定されただけというのが真相かと(苦笑)
 今作のシナリオは他の格闘ゲームに比べたら遙かにテキスト量も多くシナリオ重視となっていますが、悪し様に言えば制作側の自己満足というものが濃密で、パブリックイメージは二の次というのが顕著です。この辺りについては、考察15「サムライスピリッツ零(仮)」で取り扱う予定です。

 公式小説「黄泉の黎明」では、半蔵vs我旺、十兵衛vs夢路、慶寅vs我旺、覇王丸vs慶寅といったバトルも展開され、慶寅や我旺、夢路といった今作の中心キャラの心情も深く描かれているので、今作の世界観が好きだ、慶寅や我旺、夢路が好きだという方は読んで損はないかと。癖はありますが、下手なライトノベルよりも上手に書かれています。特にゲーム本編では適当に作られた感が漂う十兵衛の出番が多いので、十兵衛や半蔵のファンの方も興味があれば是非。

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