剣客風説草紙参之回風間 蒼月 |
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「せいぜい見てなさい、火月。これからはじまる私の計画を。」 何処かへと立ち去った2人のいた場所を見ながら、風間蒼月はそう呟いていた。 その夜、風間蒼月は風間一族の頭領に任務の完遂を報告した。 「そうか、2人を始末したか…。」 目の前に座す蒼月を見ながら、頭領がいう。 「はい、この手で確かに。」 蒼月が返答する。その声には、どのような感情もふくまれてはいないように感じられた。 これが身内を殺した者の立ち居振舞いか? いや、いかにもこの男らしいというべきか…。 「これで、約定通り…。」 頭領の思考を遮るように蒼月が言葉を発する。 「…次なる頭領になること、認めよう。」 この言葉により、蒼月は次期頭領筆頭候補となった。 それから半年後… 「頭領、江戸より幕府の使いが参りました。」 頭領は、下忍に報告の続きをうながした。 「この度の風間一族の肥前での働き、誠に見事。ついては一族の頭領、風間蒼月を両番格、百俵・七人扶持として召抱えるものなり…とのことです。」 「金屏風には興味ありませんが…まあ、いいでしょう。」 先代が不慮の死を遂げてから4ヵ月。 蒼月が新たな頭領となった風間一族の働きは目覚ましく、中には幕府御庭番衆、伊賀忍軍に並ぶのではないかと噂する者もいた。 「今はこの程度…しかし、これからは…。」 そういうと蒼月は、冷たい笑みを浮かべ、幕府からの使者の待つ部屋へと歩きだした。 (終わり) |
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幻十郎や火月と同じく、蒼月も「アスラ斬魔伝」のエンディング後であり、二之回の後でもある。 ---エンディング引用開始--- 「愚か者が、二人……」 足元に這うユガの屍を見つめる蒼月。水邪を得て更に冷酷となったその唇が、珍しく笑みを浮かべる。 人形師は滅し、弟・火月は妹との平穏な生活を選んだ。 蒼月は凍る月を見上げ、「せいぜい見ていなさい、火月……。これから始まる私の計画を」 寛政三年。 風間忍群の頭領が世を去り、次期頭領には先代の遺言により、蒼月なる男がついた。蒼月は肥前藩主に働きを認められ、やがて幕府に出入りが許された。 以来風間忍群は幕府崩壊の日まで、伊賀とともに忍びの世界を掌握したとされる。 なお、風間忍群滅亡後、宝刀『青龍』がどうなったか、知る者はない。 ---引用終了--- 冷徹な蒼月らしい終幕。弟達にはどこか優しく、他人には冷酷なお兄ちゃん。 頭領も蒼月に殺されている気がしないでもない。蒼月が頭領となることで、風間忍群の中で火月達の死を疑う者がいても動けなくなるのは明白で、権力に興味がなさそうな蒼月がなぜ頭領になりたがったのかという理由の一端が見えた気がする。 |