剣客風説草紙一之回牙神 幻十郎 |
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覇王丸との果たし合いの最中、幻十郎は子供に背中を刺される。 「お前がお父をっ…」 子供が声を震わせて言う。 背中の古傷が開き、自分の身体を血で紅く染めた幻十郎の脳裏には、母の顔が浮かんでいた。 幻十郎は子供を睨み付け、張り倒す。しかしそれ以上何もしようとはしなかった。 夕映えの紅のなか、幻十郎は覇王丸の肩を借り石段を降りていた。 「よぅ…生きてるか?」 「ふん…」 覇王丸の問い掛けに幻十郎が答える。 そして沈黙……。 「酒が…飲みたい」呟く幻十郎。 それを聞いて覇王丸が答える。 「…今夜は…飲むか」 覇王丸の眼は潤んでいるようだった。 「阿呆ゥが…」 幻十郎は閑かに目を閉じ、微笑んだように見えた。 次の瞬間、覇王丸を突き飛ばすと腰の梅鶯毒を抜いて眉間に突き付けた。 「殺し合う相手に情け…甘いぞ、覇王丸!!」 蒼白になり、血を吐くような声で幻十郎は言う。 「お前のそんなところが…昔から…。」 刃が覇王丸の額に小さな紅い玉を作る。 しかし、それ以上刀は進まなかった。 「幻十郎…おめぇ……」 覇王丸を睨み付けたまま、幻十郎は二度と動かなかった。 (終わり) |
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これは「SAMURAI SPIRITS2 アスラ斬魔伝」の幻十郎エンディングの直後でもある。 ---エンディング引用開始--- 果たし合いの時は来た。幻十郎の刀が覇王丸の刀を弾き、振り上げられる。 梅鶯毒が光を放った。 「覇王丸、殺す!!」 瞬間、熱く重い衝撃が幻十郎の背を貫く。 振り向くと、子供が幻十郎の背へ短刀を突き立てていた。 「お前がお父をっ……」 薄れ行く意識。背中の傷が開き、身を染める血煙の中で幻十郎は母の顔を見た。 落日。幻十郎は覇王丸の肩を借り、境内の石段を降りていた。幻十郎がつぶやく。 「酒が……飲みたい」 「……今夜は……呑むか」 夕陽が、覇王丸の眼を潤ませているようだった。 「……阿呆ゥが……」 微笑むと、幻十郎は閑かに目を閉じた。 ---引用終了--- シーンが大幅にかぶっているが、文章は微妙に違っており、受ける印象も少し違う。 幻十郎はこのまま息を引き取ったらしく、「剣客異聞録 甦りし蒼紅の刃 サムライスピリッツ新章」の覇王丸エンディングでは、覇王丸が「……九鬼刀馬。あの男……何処かオマエに似ているな……。幻十郎……。俺たちが目指した侍の道は、一体何処へ向かって続いているんだろうな……」と呟いている。 |